インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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大消費地・大阪でフグなどを陸上養殖 圧倒的鮮度が武器に 株式会社陸水

四方を海に囲まれた日本の、しかも漁港のすぐそばで、あえて陸上養殖を創業したのは株式会社陸水の奈須悠記社長です。鮮魚の大消費地である大阪の近郊で「育む」からこその高い鮮度という価値を訴求し、多くの飲食店などから好評を得ています。

近大マグロで習得した陸上養殖のノウハウで創業

 奈須悠記社長が水産業に関心を持ったのは、高校3年生の時にたまたま観たテレビ番組だったと言います。
 「マグロの漁獲量が減少していて、このままだと口に入らなくなるかもしれないが、近畿大学が養殖に成功したマグロなら食べ続けられるという内容で、これは面白いと、急遽進路を変更して近畿大学の水産学科に入学しました。
 卒業後、大手の水産加工食品会社で海面養殖事業に携わったんですが、養殖のための稚魚が台風や病気などにより安定して確保できず、この養殖方法に未来はあるのかと不安になりました。では、環境に左右されない養殖方法は何かと考えると陸上養殖だったんです。学生時代に関わった近大マグロは大きく成長するまでは陸上養殖なので、設備や手法はおおよそわかっていました」。
 そうして陸上養殖で創業したのが2021年。養殖事業所を大阪府岬町に設けたのは、大消費地の近くで養殖を行うことで活魚の運送という物流費を低減できるため、陸上養殖のデメリットである多額の設備投資を相殺できると考えたことでした。
 さらに、海のそばで海水を取水しやすいことと、魚を陸揚げし出荷するための製氷機などのさまざまな設備が整っていることから、地元漁業協同組合が管理する漁港に養殖事業所を置いています。
 「組合に加入させてもらうために、まず岬町に移住もしましたよ(笑)」。


▲作業後は常に洗浄を行い、清潔に保たれている加工センター。

品質と量が安定する陸上養殖 おいしい魚を手頃な価格で

 大阪府下に養殖場があることのメリットはコスト面だけではありません。奈須社長が何よりも強くアピールしたいと考えているのは、朝締めた魚を昼には届けられるという抜群の鮮度の高さです。
 「魚を締めてからあえて2~3日寝かせて食べることもある東京と違って、大阪は特に鮮度に厳しいので、大阪に一番近い養殖場を持っていることは大きな武器ですね。飲食店のお客様が陸上養殖に興味を持って見学に来られることがありますが、国産の養殖サーモンがまず珍しいですし、こんなに新鮮なのを食べたことがないと驚かれます。しかも鮮度にシビアなことから、当日に使いきれるだけの発注をされるのでフードロスの削減にも貢献していると思っています」。
 自ら海面養殖に携わっていたときに実感した稚魚の安定確保という課題も、卵からふ化した種苗だけを使用することで解決しています。飼育水は殺菌しているほか、厳密な管理下にあるので病気の発生もなく、抗生物質を使うこともありません。現在、養殖している主な魚種は、陸上養殖に向いているというサーモン、トラフグ、クエ、ヒラメ。陸上養殖によって質とともに量も安定するため、価格も安定すると奈須社長は語っています。
 「いわゆる高級魚とされる魚ですが、当社としては高額な料金を払わなくてもおいしい魚を食べていただきたいというのが方針であり、その考えから昨年11月には大阪の道頓堀に、アンテナショップとして当社の魚を寿司や天ぷらで食べ放題の飲食店も始めました」。


▲水槽の中の温度は人為的には管理されておらず、季節ごとの水温に適した魚種を育てている。

養殖場や加工所の増設と仲間作りで陸上養殖の拡大へ

 現在、奈須社長は陸上養殖を広げる仲間づくりも進めています。
 「陸上養殖自体は昔からあるものですが、今もまだ一般的ではなく、国内での生産量もわずかです。当社だけで育てられる魚の量には限りがあり、魚の漁獲量が減り続けている今日、もっと仲間を作って魚を増やしたいですね。コンサルタントではないので研修制度などもなく、養殖場もオープンです。志を共にできる方には喜んでサポートします。当社の納入先も増えているので、仲間から魚を仕入れることができるようにもなればいいですね」。
 今年は深日(ふけ)にも養殖事業所を開設した奈須社長。今後のプランとしては、今ある堺加工センターに加え、あと5カ所に加工所を点在させ大阪府下全域をカバーしたい考えです。
 「さばいたところからすぐに届ける。やはりそこにこだわりたいですね。そして、これからの日本の水産業を引っ張っていくといった気概や向上心、そして夢を持っている若い人材を増やし、将来は上場を目指します!」


▲養殖場から送られてきた魚は堺加工センター内の水槽で鮮度を維持。
経営のキモ

奈須社長は海面養殖の問題点から陸上養殖に着目。岬町の漁港近くで、品質と量の安定を保ちながら価格を抑えることのできる陸上養殖の拡大に邁進し、2月には大手企業との資本業務提携も行い、陸上養殖場を岬町に整備する予定です。


株式会社陸水

代表者名奈須 悠記
本社堺市堺区新町1-25
TEL072-487-8356
設立2021年設立
資本金5,500万円
従業員数15名
事業内容陸上養殖
ホームページhttps://www.rikusui.com/
さかしる掲載ページhttps://sakacil.com/detail/?id=20514

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