インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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職員たちからのプレゼンをきっかけに人材育成に注力 社会福祉法人 上神谷(にわだに)福祉会

堺市南区で特別養護老人ホームをはじめ、ケアハウスやデイサービスセンターなど、総合的に福祉施設を運営している上神谷福祉会。職員の働きがいを引き出し、ひいてはより質の高い介護サービスにつながるよう、丁寧な「人材育成」を進めています。

4形態の福祉施設が連携して高齢者のあらゆるニーズに対応

 特別養護老人ホーム槇塚荘やケアハウス逆瀬川、グループホーム高倉、そして赤坂台デイサービスセンターと大きく4形態の福祉施設を運営する上神谷福祉会では、「お元気な方から24時間体制での介護を必要とされる方まで、全ての高齢者のニーズにお応えできるほか、各施設が連携しているので、ご利用者の状態に応じて適切なサービスが受けられるよう別の施設へ円滑に移っていただくこともできます。お一人の方と長くお付き合いできることも当会の強みの一つ」と上野貴広施設長。
 前職で住宅設備メーカーの営業をしていたという上野施設長は、福祉業界の特異性に最初は戸惑ったと言います。「私が入社した頃はまだ措置制度が残っていて、ご利用者のほうが利用にあたり頭を下げられているのに驚きました。それが介護保険制度の導入により、施設が選ばれる時代になり、当時の福祉業界では珍しい営業担当を設けました。よそを見ることで自分たちの施設を客観視できればと現場の介護職員や事務職も同行させました」。
 そして急速に高齢化が進むなか、当福祉会でも大きな課題となったのが人材不足です。懸命に採用しても、一方で離職していく。当初、それは仕方のないことだと思っていた上野施設長が、ある出来事をきっかけに、人材を「育てる」ことに本気で取り組み始めたといいます。


▲我が家のダイニングキッチンにいるかのような温かい雰囲気で、食事ができるユニットケア施設の食堂。

職員たちの危機感から人材定着に向け研修体制を確立

 「約7年前ですが、突然に職員有志から『離職者ゼロ運動』と題されたプレゼン資料を渡されました。そこには人材の採用よりも定着に注力すべきだと説かれていたのです。『一緒に会社を変えていきたい』と言われて、共に会社のことを考えてくれる仲間がいたのだと本当に嬉しかったですね」。
 施設長へのプレゼンを実行した介護支援専門員の上原栄里奈さんと生活相談員の宮本康平さんは当時を振り返って「あの頃、仲間の一人が退職を考えていることを知り、良い人材が辞めていく原因は何なのか。今、どうにかしないと手遅れになると危機感を持ったんです」と語ります。
 「問題は人材育成のシステムが確立していないことだと思いました。現場での指導は全てその日その日の担当者任せで、手間ばかりかかって成果が見えない。それに疲れている中堅職員が多かったんです」。
 そして現在、当福祉会の人材育成の体制は「入社1年目」「入社2年目」「入社3年目以降」ときめ細かく整備されています。特に1年目は、高齢者との関わり方を学ぶためデイサービスでの「コミュニケーション研修」や、1人の新人に1人の専任指導者を一緒の勤務に入れて介護の基礎を身につける「チューター制度」の他に先輩職員との交換日記や、上野施設長や上原さんたちとの定期的な面談もあり、不安感の払拭に役立っているようです。


▲(特養)槇塚荘に取材で訪れた人気介護ユーチューバー(中央)と槇塚荘の若手職員。

ICTや機械の活用で介護をクリエイティブな仕事に

 こうした取り組みにより、離職率がかつての10数%から2~3%まで低減し、介護職についてはもう何年も中途募集していないそうです。人材が定着することで余力が生まれ、新しいことにもチャレンジできると上野施設長。例えば、国が進める介護業界におけるICTの活用事例の一つとして、ベンチャー企業が開発中だった排泄センサーの実証実験に協力しています。
 「介護負担が最も大きい排泄ケアの労力軽減につながればと、データの提供や改善点の提案などに協力しました。それまでも私たちは、超音波で膀胱の動きを捉え、その方の排尿パターンを予測し、いち早くケアを行う取り組みを進めていましたが、この排泄センサーは匂いで排便もすぐに検知するもので、現場での検証を経て昨年10月に発売されています」と上原さん。
 職員の働きやすい環境づくりの一環としてリフト機器の導入などを進めてきた上野施設長は「肉体労働でつらいというイメージの介護職をもっとクリエイティブな仕事にしなければと考えています。機械ができることは機械がすればいい。職員の経験や勘だけでなく、明確な根拠に裏打ちされた創造性の高い介護職の魅力を、これからも当会から発信していきたいですし、それが職員の働きがいとなり、ひいてはご利用者への質の高いサービスにつながると確信しています」と語っています。


▲人材育成もかねて専門学校の学生にノーリフトケアなどの勉強会も行っている。
経営のキモ

上野施設長と職員が一致団結し、人材の採用よりも定着に注力した「人を育てる」仕組みづくりを進めてきました。ベンチャー企業との新たな介護用のシステムの開発にも乗り出すなど、「職員がワクワクできる」が当所のテーマです。


社会福祉法人上神谷福祉会

代表者名理事長 上野 健治
本社堺市南区逆瀬川1038-2
TEL072-291-0920
設立1994年設立
従業員数160名
事業内容福祉・介護関連サービス
ホームページhttp://www.makiduka.jp/

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