インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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オーダーメイドの医療用ガーゼで高い専門性を発揮 笠井商会

手術などで使われる特殊な医療用ガーゼに特化して製造販売を行なっている笠井商会。きめ細かい要望にも応えるオーダーメイドが多くの医療現場で高く評価されています。豊富なノウハウと高い技術力で、最近では口腔(こうくう)内清掃用商品を開発しました。

医療用ガーゼの製造販売で競争力を強化

 創業は約60年前の1964年。当初は衛生材料の販売から始まったといいます。2代目である笠井貞夫現社長が入社した時に製造も手掛けていこうと縫製技術を習得。衛生材料の販売とあわせてガーゼハンカチの製造・販売を始めたということです。
 やがて、ガーゼ生地の販売だけでなく縫製もできると知った配送先の病院から、医療用ガーゼを作ってほしいという要望を受けたのが、今日の事業につながっています。しばらくはガーゼハンカチと医療用ガーゼの両方を製造していましたが、まもなく競争力の高い医療用に特化していきました。
 「医療用ガーゼが一般的でなかった昔は、ガーゼを縫製もせずに使用していたり、市販のガーゼハンカチを手術に用いたりすることもあったようです。切りっぱなしは糸くずが体内に残る可能性があり、安全性への懸念から医療用ガーゼへのニーズが高まっていました。
 当社ではまず、無蛍光のガーゼを取り寄せ、一般のガーゼハンカチをまだ製造していた頃には、医療用ガーゼを縫製する前にミシンまわりをきれいに清掃するなどの配慮をしていました。やがて非常に特殊な製品である医療用ガーゼの製造販売に専念することにしたのです」と笠井健功氏は語っています。


▲同社では一枚一枚丁寧に医療用ガーゼ作りを行う。

健康医療ものづくり研究会を機に口腔内清掃用製品を新開発

 医療用ガーゼの製造には、独特のノウハウや技術が求められます。例えば、体内にガーゼの置き忘れがないよう生地に「X線造影糸」が織り込まれているほか、ガーゼの端には紐がしっかりと縫い付けられています。その紐の寸法も細かく規定されているのだとか。
 「ガーゼの裁断口から糸くずが出ないように縫製する方法も、大量生産型の大手メーカーでは一つの縫い方で統一していますが、当社は職人による1枚1枚手縫いなので、医師の要望などにより千鳥縫い、メロー縫い、本縫いの3種類を使い分けています。また、手術の内容によって出血量などが異なるため、サイズや合わせ枚数も細かい要望にオーダーメイドで応えており、直接の得意先である大手メーカーに向けての、ひいてはエンドユーザーである医療機関に向けての大きなアピールになっています」。
 そうしたなかで、医療現場の声を直接聞いてみたいと健功氏が参加している堺市産業振興センターの「さかい・健康医療ものづくり研究会」をきっかけに、新たな製品が誕生しました。口腔内清掃用「口腔ケアガーゼ」です。
 「研究会の中で個別相談会が開かれた時、嚥下(えんげ)障害を持つ患者さんの口腔内を清掃するための製品が作れないかという相談を受けました。これまで裁断されただけのカットガーゼを指にぐるぐる巻きつけて使っていたそうで、その手間を軽減したいという要望でした。単価を少しでも低く抑えるため最初は三角に折って縫ったものを試作品として持っていきましたが、ケアの途中で抜けないように握り込むための柄が必要なことや、その柄が長すぎても短くてもいけないこと、さらには指を全て覆うものでなければいけないことなどをクリアさせるためにいくつもの試作を重ねました。現在は完成し現場でモニター使用中です。家庭の介護現場でも需要が見込める製品で、今年の発売を目指しています」。




▲口腔内清掃用として製品化した「口腔ケアガーゼ」の使用例

医療用ガーゼを活かした一般向け製品で自社ブランドを

 今回の経験から医療現場の声を直接聞きたいという思いが強まり、最近ではメーカーの営業担当に同行させてもらい始めたという健功氏。さらにはエンドユーザーに直接製品を届けたいと自社ブランドの立ち上げも計画中です。
 「ただ医療用は滅菌設備などが必要で、負うべき責任も重いことから、安全性や衛生面でニーズのある育児や介護用で医療用ガーゼを使った製品を展開できないかと考えています。すでにいくつかの製品をモニターで使ってもらいました。
 また、これまでわずかなキズでもB品として処分していたガーゼ生地を有効利用できないかと考えています」。
 今後は、これまで通り現場の声をカタチにする医療用分野で専門性を発揮するほか、高品質の医療用ガーゼの優位性を広く一般の方々にも訴求できる製品づくりを進めていきたいと健功氏。人の命に寄り添う現場こそが、同社の丁寧で高品質な「日本製」が活かされる市場のようです。


▲手軽に使用できる「口腔ケアガーゼ」
特集 企業のターニングポイント

自社ブランド商品を立ち上げようという熱い思いで、健康医療ものづくり研究会で医療用ガーゼのニーズ探索を行った結果、口腔内清掃用製品「口腔ケアガーゼ」の共同開発テーマを得て、その実現が間近になっています。


笠井商会

代表者名笠井 貞夫
本社堺市西区鳳東町1-62
TEL072-271-0116
設立1964年創業
従業員数10名
事業内容衛生材料製造販売・OEM・受託製作
ホームページhttps://kasaigauze.com/

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック