インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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小さな前進も評価する仕組みで若手の意欲を引き出す 株式会社新川製作所

従業員とその家族が幸せになり社会にも貢献できる会社へ

 溶接の火花散る新川製作所の工場内で目を引くのは、きびきびと働く若手の職人たちです。来客を迎える元気な挨拶からも活気が感じられました。「ところが、以前はこうではなかったんです。社内はお通夜のように元気がなく、7年前には若手がゼロになったこともありました」と新川浩社長。
 1958年にパイプ製脚立などの製造で創業した同社は、安価な海外製品に押されて一時は経営の危機もありましたが、ネスティングラックやクロスサポーターといった物流機器に特化したメーカーに転向し、その後は順調に業績を伸ばしてきました。そうしたなか、2017年に経営を承継した新川社長は、自社の未来を改めて考えた時に、「食べていけるぐらいの売上はこれからも見込めるだろうが、それでいいのか?」と自問したそうです。
 「他の経営者の方々の話を聞いたり、本を読んだりしているうちに、自分が理想とする会社を目指そうと思いました。従業員が朝から気持ち良く挨拶を交わし合える職場でなければ、従業員も幸せにできないし、社会に貢献できるものも作れないと考えたのです」。
 「5年をかけて、一緒に会社を変えよう」と工場長に呼びかけたその5年を迎えての結果は、社員は10名の増強、売上も50%増を達成しました。新規顧客も増やし、1社からの売上に大きく依存していたのを解消しています。
 「何より一番嬉しいのは、若手が率先して新しい仕事にも取り組もうという意欲を見せてくれたことです」と新川社長。昨年末に新しく導入した塗装ロボットも、若い3人がプログラミングから毎日の運用まで全てを担っています。


▲若手職人の3人が導入前の打合せから参加し、運用に携わっている「塗装ロボット」。

ミスマッチの少ない採用方法で定着率が格段に向上

 一度はゼロになった若手社員が今では20人を超えました。その半数近くが「さかいJOBステーション」を通しての採用です。
 「経営者が自ら求職者に自社をアピールできる交流イベントがあり、そこで当社の良いところも、嫌われそうなところも全て話していますから、入社後のミスマッチが少ないんですね」。
 そして、入社後も孤立させず、一人ひとりの頑張りを正当に評価する仕組みを整えています。まず、先輩と後輩社員が2人1組のマンツーマンで指導する「バディ制度」。入社まもない社員が抱えがちな不安や疑問をそのまま持ち帰らせることのないよう、仕事の終わりには必ず終礼を行っています。仕事に慣れていない入社後1年間は残業をさせないことになっていますが、帰りづらくならないよう、先輩から声を掛けて終礼をしている様子に「会社全体で若手を大切に育てようという風土が作られてきたことが嬉しい」と新川社長も語っていました。
 そして、その月に一番頑張った社員を表彰する「MVP制度」は、全社員が投票して選んでいます。
 「20の能力の人が頑張って25の成果を上げた場合と、80の能力のある人が75の成果を上げた場合と比較して、75の方が25の3倍すごいという評価の仕方を当社ではしません。一人ひとりの特性や個性に応じて、その人なりの頑張りを正当に評価したいと考えています」。
 それはまさに、「多様性を認識するだけでなく、一人ひとりの個性を尊重して、その能力を発揮できる環境を作っていく」という考えの「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)」そのものの実践です。


▲社内新聞を手作りしたり通販サイトの管理を行ったり、事務所の女性社員たちの活躍も大きい。

一人ひとりの事情や個性に寄り添った人材育成を

 同社では「頑張った人がきちんと評価され報われるよう、それぞれの事情や多様性に思いやりを持った賃金制度」にしようと、昨年9月に「労務管理基本方針」を策定しました。職務給と職能給を分けて規定し、諸手当も改めて制度化しています。
 「自分はリーダーや管理職に向かないと考える社員も、専門的なスキルを高めて貢献できれば、リーダーより給与が上がる可能性があるというのも一つの多様性だと考えています。その人なりに半歩でも一歩でも前に進むのを支援したいのです」と新川社長。そのために半年に1回、一人ひとりとミーティングを行い、今何ができて、何ができていないかを確認するほか、今後どういう仕事にチャレンジしたいのかを聞いています。
 これまで受注生産だけだった同社が、2020年に自社のオリジナル製品「エコテナ-α」を発売しました。工具なしで簡単に高さの変えられるネスティングラックで、初めて事業者向け通信販売サイトも活用、大きな反響を得ています。また、本人の能力も踏まえながら複数のスキルを持つ多能工の育成にも注力しており、「見て覚えろ」ではなく「寄り添う姿勢」で、1ヶ月に1回、就業時間内に溶接の技術講習会も開いています。
 「さまざまな事情や個性を抱えた人が安心して働けるよう、横に寄り添って支援すれば、社会に貢献できる人材が育ちます。中小企業こそが率先して、そういう人材育成をすることで、日本のものづくりを支えていくことができるんじゃないかと思います」と新川社長は語っていました。


▲「人それぞれの事情を無視しての平等というのはない」という新川社長の思いを受けて、子どもが産まれたばかりの男性社員の時短勤務もみんなでフォロー。
成功のポイント

ここに多くの若者が集うのは、社長の人柄です。常に働きやすい職場を目指し、明確な方向性の提示、新しいことに挑戦する進取の気性、さらに『個を認め、個を活かす』方針。これらが活き活きとした職場を生み出す原動力であり、これらを体現する従業員の皆さんの努力の賜物です。

株式会社新川製作所

代表者名代表取締役 新川 浩
本社堺市中区陶器北98-2
TEL072-234-2261
設立1958年創業 1968年設立
資本金1,300万円
従業員数30名
事業内容クロスサポーター・ネスティングラックなどの物流機器の製造販売、各種鋼材、配管の加工・販売
ホームページ https://shinkawa-g.jp/

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