インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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超臨界技術を活用した機能性材料加工業へ進出 株式会社アイテック

ブラウン管の製造設備から超臨界流体技術の開発へ

 374℃と22.1MPaという非常に高い温度と圧力をかけられた水は、液体と気体の境界線のない「超臨界水」と呼ばれる状態になります。株式会社アイテックは、この超臨界水の密度が気体より低くなった状態になると誘電率が低下するという現象を利用して、有機・無機ハイブリッドナノ粒子を合成する装置を自社開発。2005年から発売しています。
 同社では1995年の創業当初、テレビのブラウン管の製造設備を手がけていましたが、液晶テレビの台頭により事業の継続が難しくなり、自社が持っていた高温・高圧技術を活かせないかということで「超臨界」に着目しました。現在は、超臨界水熱合成装置のほか、超臨界CO2装置を製造、販売しています。なかでも、最近注目されているのが超臨界CO2です。
 臨界圧力7.38MPaを超えた領域でのCO2が有機溶媒(※1)のような働きをする特徴を利用しており、今まで有機溶媒を使って行われていた抽出や洗浄、粒子合成、染色などの用途への利用が可能となりました。有機溶媒を使った技術と比べ、有機溶媒を除去するための乾燥プロセスや溶媒の廃液処理、防火対策、脱臭対策などが不要となり、環境リスクが非常に低いのが大きな特長です。
 昨今の地球環境に配慮して循環型社会を目指すSDGs(※2)やCCUS(※3)への関心が高まっていることから、多くの企業が有機溶媒に代わるものとして超臨界CO2に注目しており、同社にも毎日のように問い合わせがあるといいます。


▲高圧縮技術を活かした機械や装置の設計も自社で行なっている。

※1)有機溶媒...有機溶剤のこと。水に溶けない物質を溶かす液体の有機化合物の総称。
※2)SDGs(Sustainable Development Goals)...2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標。
※3)CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)...CO2を回収して大気中に放出させない「回収・有効利用・貯留」の考え方や技術。

超臨界CO2装置の販売から受託加工へ事業を拡げて

 しかし一方で、超臨界CO2装置は非常に高額なうえ、この装置を使用して製造するには法律に従った運用が必要であり、購入に向けてのハードルが非常に高いのが実状だったと、飯田大介取締役営業部長は言います。
「そこで当社では、超臨界装置を使った試作試験を受託するサービスを始めましたが、その先で装置の販売に結びつけることが本来のねらいでした。しかし、高額な装置を簡単に購入いただけるわけでなく、このたび受託試験・試作だけでなく、受託製造を手がけることとしました。これを事業化できれば売上も安定し、事業プランも立てやすくなると考えています」。
 例えば宇宙ステーションや人工衛星などに使用されるエアロゲルとは、シリカを骨格とし、99%以上が空気でナノレベルの細孔を形成している極めて軽量の高性能断熱材料素材です。内部構造を破壊せずに乾燥する技術が求められます。超臨界CO2を使えば、より軽く、より薄くて高断熱効果の製品づくりが可能です。SDGsならびに2050年カーボンニュートラルの実現に向けて広く産業素材として、自動車(特に電気自動車)、航空機、住宅・建材などに重要な材料になります。
 またハイテク産業や半導体産業に無くてはならない機能性素材の有機成分洗浄に超臨界CO2処理が期待されます。この機能性素材には、製造工程により主製品と異なる複数の有機成分が含有されています。この有機成分は機能性を維持するために必要な物もあれば、付着により機能を阻害する不要成分もあります。有機溶媒による洗浄では、これら全て除去してしまい、ベストな機能性を発揮できない問題が有りますが、超臨界CO2は温度、圧力を変えることにより、選択した除去が可能です。
 同社では、この超臨界CO2技術を使って、機能性材料受託加工への進出を考え、現在浜寺工場で設備の準備中です。受託試験部のリーダー・鈴木慎悟さんは「さらには健康食品から有効成分だけを抽出したり、脂肪分を除去したりといったことも考えられます。堺の伝統産業であるお茶(抹茶)からカフェインだけを除去する開発も行っています。成功すれば製茶メーカーから受託加工を行う計画で、カフェイン摂取したくない妊婦さんなどに喜ばれると思います」と語っていました。


▲ナノ粒子の合成や無機粒子の造粒など、顧客に代わって超臨界技術装置による試験・試作を行っている。

いろいろな高付加価値材料の加工・開発を目指して

 これまで主に機械装置を手がけてきた同社が機能性材料加工に進出するに際し新しく導入される設備について、飯田取締役営業部長は「高圧設備ですので、安全面はさることながら、IoTを取り入れた設備を考えています。受託加工という新たな事業を立ち上げるにあたっては、機能性素材や食品加工に限らず門戸を広げておきたいと考えてます」と答えています。実際に、最近は受託での研究開発・試験・試作ののちに委託加工を希望する企業が増えています。鈴木さんは「特殊な装置ですし、飛び込み営業をして需要をキャッチできるものでもないので、現在も行っていますが、ホームページを充実させて、インターネットを通じて広く営業活動を行っていきたい」と語っていました。
 アイテックではすでに、自社独自の技術を生かした機能性ナノ材料や、ナノ素材の応用製品として透明スクリーンフィルムなどを自社製品として販売してきましたが、今後は超臨界CO2の技術から新たな自社製品も誕生するかもしれません。


▲循環型社会のために必要な自社の超臨界技術。浜寺工場では、あらゆる分野の試験を手がけている。
成功のポイント

同社の超臨界水熱合成装置は産業界・学会から高い評価を得ています。
今回、超臨界CO2技術・装置を使って、機能性材料受託加工事業に進出することは、高度な加工技術を持たない中小食品・医薬品企業にとって、開発・製造の強力なパートナーとして期待できます。


株式会社アイテック

代表者名代表取締役 飯田 勝康
本社堺市堺区海山町3-161-2
TEL072-226-8853
設立1995年設立
資本金5,000万円
従業員数11名
事業内容超臨界水熱合成装置、超臨界CO2装置、グリーン水素水熱装置、高圧スラリーポンプ、機能性ナノ材料、透明スクリーンフィルムなどの開発、製造、販売
ホームページ https://www.itec-es.co.jp/

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