インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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複合機の導入とともに新工場を建設高精密加工で競争力を強化 株式会社加藤鉄工所

6mの長尺ロールの製作を強みに多様な業界から受注

 印刷や合板、製鉄、フィルムなど、さまざまな産業機械に取り付けられている工業用ロール。加藤鉄工所は、ロール製作の専業メーカーとして原材料の仕入れから仕様・設計、製造と完成品の納入までを一貫して担っています。
 特に強みといえるのは、一般に3mまでのロールを取り扱うメーカーが多いなかで、全長6mの長尺ロールを製造できることだとか。
 また、これまでは外部に委託していた加工を自社で内作できるよう、穴あけから旋盤、五面加工などを行う複合機も導入。表面処理加工だけは今も外注しているものの、ほぼ自社内で製造過程を完結させるよう一貫体制を強化しました。
 「新しく導入した複合機については、西日本でも数台しかないもので、より高度で複雑な注文にも自社で対応できるようになりました」と加藤敏昭社長は語っています。
 ところが、この複合機はかなり大きなもので、本社工場に設置する場所がなかったといいます。また、本社工場には3t車までしか搬出入することができず、より重量のある製品を取り扱えるようにする必要も出てきたということで、新工場を計画したと加藤社長。複合機が製作、納品されるまでに約2年かかることから、その間に土地を決め、工場を建設させることになりました。


▲精度の求められる加工が得意な円筒研磨機

早めに若手技術者を増員し竣工とともに円滑に操業を開始

 新工場が稼働を開始したのは、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除された直後の、昨年6月でした。コロナが騒がれ始めた頃には、建設工事もすでに進んでおり、機械を置く土台を強化する基礎工事を残すのみだったので、予定通りに竣工を迎えることができたそうですが、残念ながら完成記念式典を開催することは叶いませんでした。得意先企業や関係者へのお披露目は、個別に新工場に招いて見学いただくという形で進められたそうです。
 「緊急事態宣言中は休業することもありましたし、当社ではこれまで営業活動を特にしてこなかったため、得意先の営業活動に依存しており、その営業活動がコロナ禍にあってままならないということで、一時は受注も減少しました。ようやく順調に稼働し始めたのは8月、9月頃からでしたね」と加藤社長。
 それでも新工場の準備は抜かりなく、竣工の前から技術者を増員し、本社工場で実際の業務にあたりながら待機しており、新工場の完成とともにスムーズに操業を開始できたとのことです。
 「見学に来られた得意先には、若手技術者が多いことに驚かれるんです」と加藤社長が話すように、現場では20代前半から30代の技術者が目に付きます。「ベテランが若手にマンツーマンで指導しているほかは、特別な機会を設けて勉強会を開いたりはしていませんが、ものづくりの楽しさ、魅力は伝えたいと思いますね。実際、若いので新しい機械にも前向きで、やる気にあふれた社員たちです」と大きな期待感をのぞかせていました。
 長年の懸案であった重量のある製品づくりについては、工場内にクレーンも備えて重い製品の加工なども手がけられるようになり、また搬出入についても10tトラックが出入りできるようになっています。


▲モニターで複合旋盤を操作

アフターコロナを見据えて競争力をさらに強化

 突然に訪れたコロナショックによる経営への影響について、加藤社長は「当社は製鉄から食品の包装フィルム、ヘアケア製品の詰め替え用パッケージなど、幅広い業界の製品づくりに関わっていることとロール自体が消耗品でリピートが多いことから、幸いにも景気にさほど左右されることなく、比較的安定して受注できます。最近では、輸血や点滴に用いられる医療用パックを製造するロールも製作しています。コロナによって一時的に落ち込んだとしても、終息後は需要が戻ってくると考えていますので、その先にいかに備えるかだと思いますね」と語っています。
 新工場の設立と同時に導入された複合機によって、同社は強力な武器を手に入れたといえるでしょう。これまではできなかった穴をあけたり溝をつけたりといった、より複雑な加工ができるようになったことをきちんとアピールしていかなくてはと加藤社長。特に薄いフィルムを製造するためのロールなど、高い精度が求められるものづくりを得意とするのは大きな強みです。
 「コロナショックを受けて、当社は自ら営業活動をしてこなかったことが弱みだと気付かされました。ずっと待ちの姿勢だったといえます。ホームページすら作っていなかったんですから(笑)。最近になってようやく、加工事例などをアピールするために立ち上げました。設備を増強したことで、納期管理も確実に行いたいと思っています」。
 同社がもともと持っていた高い技術力や競争力が、新工場の増設によってさらに強化されたことにより、得意先の短納期やコストの低減、そして少量多品種生産といった要望に応えられる体制が整えられたと加藤社長は語っています。
 新工場の稼働を機に、待ちの経営から攻めの経営へ。自らが動き、得意先からの注文、ひいては時代に求められるものにあわせて設備も整備していきたいということで、さらなる複合機の増強も視野に入っているとのこと。ますますの成長が期待されます。


▲10tトラックで重量のある製品を搬出できるようになった新美原工場
成功のポイント

同社は、技術力はもとより、早めの見積と、早めの納期により、厳しいスケジュール管理の顧客から大きな信頼を得ています。また、抜かりのない若手技術者の増員と準備教育により、新工場に導入された最新設備はスムースに立上り、更なる顧客の信頼獲得につながると期待されます。


株式会社加藤鉄工所

代表者名取締役社長 加藤 敏昭
本社堺市中区楢葉152
新工場堺市美原区太井339-1
TEL072-239-7816
設立1963年創業 1977年設立
資本金1,000万円
従業員数26名
事業内容印刷・合板・鉄工各種ロール製作、メッキロール・ゴムロール製作、円筒研磨加工・機械製作および修理、機械設計
ホームページ https://kato-t-k.com

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