インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

高い浄化能力を持ったろ過装置を低コストで 株式会社浪速工作所

途上国の子どもたちに安全な飲み水をという思いに共鳴して

 阪神淡路大震災や東北大震災、熊本大震災など大きな地震が相次ぐなかで、被災者が最も困ることの一つに、飲料水や生活用水の確保が挙げられています。浪速工作所がこのたび開発したのは、こうした非常時に役立つ小型ろ過装置「Wクリーン」です。開発のきっかけは、ある出会いでした。
 「一昨年のある国際展示会に出展した時に、図面を持ってそれを製作できる企業を探し回っている方に声をかけられたんです。浄化装置を企画販売する日本スレッド(株)の常松健一会長でした。どの会社にも無理と言われた設計図でしたが、当社はその装置の使用用途や使用環境などを聞いた上で、図面通りでなくても目的を果たせるものを提案することを得意としています。話を聞けば、世界には安全な飲み水がないために220万人の子どもたちが亡くなっているとのこと。日本の浄化技術は世界一だけれど、価格も高い。途上国にできるだけ低価格のろ過装置を届けたいという常松会長の熱い思いに共鳴し、うちなら作ることができると約束したのです」と谷本和考社長。そして、奇しくもこの製品開発が、ずっと谷本社長の念頭にあった自社ブランドへの道を開きました。
 「当社は水や環境を事業としている大手メーカーをお得意先として、パイプ用の押出金型などを設計・製作するなど、日本の水道事業の発展に貢献してきたイノベーターだと自負しています。しかし、将来も成長し続けるためには下請けから脱却し、自社ブランドを確立させる必要があると思っていました。それがどうすれば叶うのか模索しているさなかの出会いだったんです」。


▲社員の平均年齢は30代。若手技術者の育成に注力している。

2種類のろ過機能で高い浄化機能と低コストを両立

 小型ろ過装置「Wクリーン」は、途上国で使用することを前提に、製造コストだけでなく、設置やその後の管理にかかるコストの低減も図られた製品です。一般的なろ過装置は、塩素に耐性のある非常に小さな原虫クリプトスポリジウムを膜ろ過で除去していますが、2μほどの原虫を除くために0.1μの膜ろ過を使用するのはオーバースペックだと考えた谷本社長は、1つの装置内に2種類のろ過機能を収めました。まず、らせんによる遠心分離で大きな不純物を除いたあと、独自に開発したフィルターで原虫を除去するというものです。
 目詰まりしやすい膜ろ過を使用した装置に比べて、コストは5分の1に抑えられたうえ、ろ過スピードは20 倍、耐久性は40倍に向上。1台あたり1日10tのろ過が可能で、連結することで必要な水量を確保することができます。さらに搬送しやすい小型化を実現。部品点数も最小限にしたため、設置やフィルターの交換に専門知識が必要なく、現地のスタッフによる管理を可能にしています。こうしたランニングコストを含めて、装置としてのコストは100分の1以下。そして、この「Wクリーン」の特長はそのまま、日本国内でも防災用として期待されるものです。


▲小型ろ過装置「Wクリーン」

アイデアを形にする高い技術力で下請けから脱却「共創型企業」へ

 日本国内の飲料用浄水施設や家庭での使用が認められるよう、準備中ですが、「Wクリーン」はすでに国内では、食品会社の瓶の洗浄用や、機械部品に使う水溶性洗浄剤のリサイクルなど、飲み水以外の用途で採用されています。
 独自の企画開発力で、これまで3千を超える製品を世に送り出してきた浪速工作所。開発費の調達から量産までのスケジューリングなど豊富なノウハウを生かして、今後は、解決すべき社会課題に気付きアイデアを持っている企業と対等な立場で連携する "共創型企業"を目指す考えで、すでに7つ目のプロジェクトも動いています。
 「中小企業の一社一社は弱くても、もし全国の中小企業が集まって一つの企業体になったら強力ですよね。まず、堺市の『第二創業促進支援事業』の対象企業に選ばれた5社で、一つのブランドを作っていこうと取り組み始めました。いつか社内にラボを作り、学生さんや、当社によく遊びに来られる技術者のOBたちが集まるコミュニティになればと考えています」と谷本社長、ものづくりが好きで好きでたまらないといった笑顔で語っていました。


▲CADルームで設計を行いながら、工場の稼働状況を把握できる。

株式会社浪速工作所

代表者名代表取締役 谷本 和考
本社堺市南区高尾3-3287-2
TEL072-271-5931
設立1946年設立
資本金1,000万円
従業員数30名
事業内容プラスチック金型・装置・自動ライン・治具・工具・機械の設計・製作・据付・修理
ホームページ http://www.naniwakousaku.co.jp/

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック