インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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逆転の発想で画期的なエア振動シリンダを実現 日精工機株式会社 代表取締役 森田 昌孝

他社にはない独自の技術で競争にならないことを目指す

 創業は1969年。今年、50周年の節目を迎えた日精工機株式会社は、エア機器の販売商社としてスタートしましたが、競争が激しく利益を確保できないということで、1976年から自社製品の開発を進めてきました。
 「蓄積してきた知識を活かすべく、当初からエア機器に特化しました」と森田昌孝社長。同社の優位性については、大手メーカーと違って小回りの利くところで、顧客の要望によってカスタマイズすることはもちろん、同社で販売した機器は納入後も手直しや修理の依頼に対応。さらには、可能な限り短納期にも応じているとか。販社ではなく、メーカーだからこその強みだと森田社長は語っています。
 エア機器の空気圧制御技術とは、大気を圧縮させて生成する圧縮空気がエネルギーを蓄積してピストンを動かし続けるもので、古くから利用されている技術です。あいまいな動きながら、安全で調整しやすく、また安価で改造しやすいことが特徴です。
 メーカーとして同社が目指すのは「他社にはない便利なものの開発」で、それによって競争力を強化するというよりは、むしろ競争にならないことが理想だと考えています。例えば、先代の森田佳男会長が開発した製品「エア振動シリンダ」は、その独創的なアイデアゆえに、2001年に日本発明大賞の考案功労賞を受賞。今なお、同社を代表する主力製品です。


▲空気を圧縮させる際に、あえて空気を逃すというユニークな発想が評価された「エア振動シリンダ」。

独自に開発したエア振動シリンダのピストンの速度は通常の約10倍

 「エア振動シリンダ」の特徴について、森田社長は「エネルギーを低減させないために、圧縮した空気が逃げないようゴムでシールするのが一般的な製品の考え方ですが、当社のエア振動シリンダは、エネルギーを落とさない微妙なところで、わずかに空気を逃がしています。それによって、抵抗が小さくなるので振動スピードが高まるうえ、高頻度に動かしても温度が上がりにくいため、磨耗が少なく、耐久性も向上しました」と語っています。
 製品化に要した期間は約2年。通常のシリンダの約10倍という高速度で動くため、耐久性を高めるところで苦労しましたが、材質の選定と加工精度の工夫でクリアしたそうです。エア振動シリンダは粉体を流す時の詰まりを防止するバイブレーターとして活用されているほか、振動コンベアとして活躍しています。
 エア振動コンベアは、コンベア自体が動いて物を運搬するベルトコンベアなどと異なり、その位置で水平に動いて運搬物を滑らせ送るので、床に運搬物が落ちないうえ、水に強く洗浄しやすいことから、食品や薬品メーカーの生産現場で多く採用されています。
 また、空気中に揮発性ガスが含まれている可能性のある石油生成や石油化学、化学合成プラントなどでは、電気機器などが一切使えないため、そうした防爆領域にもエア振動コンベアが向いているそうです。


▲勉強会などの機会を特別に設けず、日々の業務の中でベテランから若手技術者へ、技術の継承は自然と行われている。

顧客からの難しい要望が技術力をさらに磨いて

 最近では、同社の高い技術力を頼みとして、自動機などの省力機械の問い合わせも増えているといい、エア機器を組み合わせた省力化ロボットも手がけています。正確性を求められる部分については、電動シリンダを組み込むことで対応しているとか。
 「難しかったり実現が面倒だったりで、他社に断られたお客様からの依頼も少なくなく、私たちの新たな技術や機械の開発のきっかけも、そうしたお客様の課題や要望であることが多いですね。そうした課題解決や開発には、技術者全員で臨みます。なかには、『うちを実験台にしても構わない』とおっしゃっていただけるありがたいお客様もいて、納品後にもさまざまな改良を加え続けることもあります」と森田社長。
 同社では、アイデアを出し合う提案制度を導入しており、これまでも振動コンベアを逆方向にも送れないかという要望や、別の顧客からの一つのコンベアを左右両方の向きに送れるようにしたいという要望に対して、1本のコンベアで完結させようと考えずに、逆向きの振動シリンダを2本用意することで解決するという、技術者からの提案で実現させた事例があったといいます。
 特に営業担当者を置いていないという日精工機の新規取引のきっかけは、顧客企業からの紹介や、ホームページで調べて問い合わせてくるケースがほとんどだとか。「当社の規模では、遠くの企業さんに対応するのはなかなか難しいのですが」と語る森田社長ですが、他社で対応できないから頼ってこられたと思えば、可能な限り応じています。例えば、ホームページを見たという静岡県内の企業からの、マイナス40℃の冷凍庫内でコンベアを動かしたいという突然の依頼については、まずエア振動シリンダを送って、その環境で稼働することを確認したうえで、打ち合わせをし、試行錯誤を繰り返して求められる仕様を実現しました。
 他社には真似できない独自の技術開発力は、それ自体が優れた"営業マン"だといえそうです。


▲穴あけ作業中の様子。顧客の用途に応じ、さらには使い勝手を高めるために丁寧なカスタマイズも行う。

日精工機株式会社

代表者名代表取締役 森田昌孝
本社堺市北区奥本町1-183
TEL072-251-5500
設立1969年設立
資本金1,200万円
従業員数8名
事業内容エア機器を応用した省力化・自動化機器の開発、製造、販売。エア機器の卸し販売。
ホームページ http://nissei-kouki.com/

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