インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

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展望台の要を支える熟練の熱処理技術 株式会社ダイネツ 葛村 和正 社長・葛村 安弘 専務取締役

創業200年の老舗企業大型品の加工技術を専門に

鍛冶・炭問屋として1813年に創業し、2013年には創業200周年を迎える株式会社ダイネツ。江戸時代には「葛籠屋(つづらや)安兵衛」の屋号で堺の地場産業である刀鍛冶を支え、時代の変遷に伴いコークスの製造に着手、現在は船舶やプラント、自動車の部品など、グループ会社と連携し多種多様な熱処理加工を行っています。
熱処理加工とは、鋼を加熱・冷却して硬さや性質を変化させる工程で、見た目には加工後もほとんど変化がありません。
しかし、熱処理により素材を柔らかくしたり硬くすることができるため、鉄鋼製品の加工においては非常に重要な工程を担っています。


▲江戸時代に交付された
「鍛冶炭問屋 葛籠屋」の手形。


▲堺商工会議所の副会頭としても活躍される葛村和正社長。「改善や改良など、感性を使ってものづくりを新しくしていくことが、日本の存在価値。ものづくりの基本は、日本で守っていきたい」。


▲「スカイツリーに使うと聞いたのは最後の最後。多くのテストをすることにより、より良い製品を作り上げる技術は、日本のものづくりの姿勢である。これからも他でできない品質に、トライし続けます」と語る葛村安弘専務。

リスクと闘い、熟練の熱処理技術で高強度の鋼材を開発

ダイネツに大手鋼材メーカーから東京スカイツリー建設用鋼材への協力要請があったのは数年前。設計のデザインで展望台を支えるには通常の鋼材では強度不足のため、ダイネツが大手鋼材メーカーとの共同で、より強度のある鋼材を開発することになったのです。
とはいえ、展望台を支える強度を持たせるには、素材の鉄にクロムやニッケルなどのレアメタルを加えた高合金の鋼材を、さらに熱処理によって強度を上げる必要があり、技術的に非常に難しい課題がありました。「強度を上げるには、加熱する温度もさることながら、素早く冷却する必要があります。ところが、早く冷却すればするほど割れる可能性が高くなる」と葛村専務。こうしたリスクを抱えながら鋼材メーカーと連携して適切な熱処理を模索し、ようやく条件に適う鋼材を作り上げることができたのです。
東京スカイツリーには、ダイネツの技術力が展望台を支える要に活かされているほか、グループ会社のダイネツ商事も鋼板納入で建設に参画しています。「やはり嬉しいですね。社員にとっても、自分たちの技術が日本を代表するランドマークに使われていることは大きな喜びです」(葛村専務)。

▲35トンクレーンも装備している。

円高と燃料価格高騰のなか、「ものづくりの伝統を守りたい」

伝統あるものづくりの町・堺で熱処理技術を活かし、産業界の縁の下の力持ちとしての役割を果たしているダイネツ。
いま同社に大きな壁として立ちはだかっているのが、円高と燃料価格の高騰。円高対策で取引先が相次いで海外に進出する一方、工業用ガス料金の引き上げでコストは膨らむばかり。この状況が続けば日本での熱処理産業が成り立たなくなるかもしれません。
「海外に出れば装置の改善や改良など日本人の感性でやれることが難しくなる。何よりも、日本のものづくりの基盤がどうなるか心配です」と話す葛村和正代表取締役は、堺商工会議所の副会頭という立場からも「中小企業のものづくりを維持することが日本の存在価値を高めることにもなり、そのための施策を考えていかなければ」と力説されます。創業200周年という大きな節目を迎え、「これからも堺でものづくりの伝統を守りたい」と熱く語られます。

株式会社ダイネツ

代表者 代表取締役 葛村和正
本社 堺市堺区柳之町西3-3-1
TEL 072-229-0223(代)
設立 1813年創業 1944年設立
資本金 5,000万円
従業員数 76名
事業内容 金属熱処理加工全般
ホームページ http://www.dainetsu.co.jp/

貸会場のご案内 TEL 072-255-0111 FAX 072-255-3570 ご案内ページはこのボタンをクリック