インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

インタビュー ~ 堺の元気!企業紹介 ~

創薬ベンチャー企業として、
日本の技術をアメリカで高く売る 株式会社AB size 王 勇社長

安全性と有効性の確認までを担う創薬ベンチャー

通常、一つの新薬が誕生する過程で、研究開発から臨床試験まででも10~15年の年月と、数百億からの資金がかかるといわれています。そうした製薬業界で起業したのが、株式会社AB size(エービーサイズ)です。
王 勇社長は「日本では創薬開発のベンチャー企業というのは珍しいでしょうね。大手製薬会社が自社や系列会社の中で、開発から販売までを完結させていますから。
しかし、アメリカでは新薬開発にさまざまな企業が役割分担をして関わっています。当社のような小規模の創薬ベンチャー企業は、安全性と有効性を確認するところまでを担い、それが実現したところでその薬品や技術を売ります。あくまでも製薬会社が対象のBtoBビジネスですね」と語っています。
現在開発中の経皮吸収型製剤(非ステロイド系鎮痛消炎貼り薬)も、すでにアメリカで新薬開発治験承認を取得。1年目途に導出の予定です。


▲来年には売却予定の経皮吸収型製剤(サンプル)。

難水溶性の成分を水溶化する技術を武器に起業

AB size(エービーサイズ)の強みは、レーザーを使って水に溶けにくい成分を水中で細かく砕き分散させる「LiNTEC」という技術です。王社長が准教授を務めていた大阪大学で、増原宏名誉教授が開発したもの。この技術を使えば、これまで使いにくかった成分も使えるので、いわば新薬を開発するうえでの強力なツールを手にしたということであり、LiNTECを使った新薬の自社開発と創薬支援が同社の事業の柱となっています。
しかし、日本には創薬ベンチャー企業を受け入れる環境がまだ整っていません。アメリカでこそ取得できた治験承認も、日本では実績のないベンチャー企業に認められることは少ないようで、同社の現在の主なターゲットはアメリカ市場です。
「アメリカのオフィスに駐在する取締役は長くこの業界にいて、アメリカの大手製薬会社とベンチャー企業の両方でのキャリアを持っています。前臨床試験の委託先などのネットワークも広く、大変心強い存在ですね」。


▲難水溶性の物質に高強度パルスレーザーを照射することで噴出したナノ粒子が、水中に物質が分散したコロラド溶液を作り出す。


▲日本の厚生労働省にあたるアメリカの食品医薬品局(FDA)はスタッフが多く、企業出身者が多いためか、対応が柔軟でスピーディ。大手化学メーカー勤務時代の経験からアメリカの医療業界にも詳しい伊藤氏(写真右)は、王社長の頼もしいブレーンだ。

小規模なベンチャーだから優秀なブレーンの確保が命

創薬ベンチャー企業にとって、このネットワークは生命線です。臨床試験に至るまでの複雑なプロセスではさまざまな人材が必要であり、その全てを社内に抱え込めないベンチャー企業は外部に委ねるしかありません。信頼のできるブレーンをどれだけ確保できるかが重要だと王社長は語ります。
かつて大手化学メーカーに勤め、現在は王社長のブレーンとして監査役を務める伊藤義麿氏は「王社長からリーマンショック後の厳しい時でも、委託先にストックオプションで引き受けてもらったと聞いています。技術をきちんと評価できる人たちのネットワークを持っているところがすごい」と評価します。
「2月まで何とかなるなら、この12月は慌てないでいようというのが私の主義(笑)。不必要な心配は、投資家を不安にさせるだけですから」という王社長は、若い世代に向けて「先行き不透明な時代ですが、自分の能力と人脈と経験を備えた段階でもっと起業すればいいと思う」とエールを送っていました。


▲堺地域振興ファンドから投資を受けている王社長は「堺にオフィスを置いて感じたのは、商人の町らしいリベラルな空気。うちのような異質な企業も特別視しないのがいいですね」と語る。


▲大手企業と違って全く無駄な動きがない。そうでないとベンチャー企業は生き残っていけませんから。どんなに資金繰りで大変な時にも熟睡できる社長には感心しますよ(笑)」と伊藤氏。

株式会社AB size(エービー サイズ)

代表者 代表取締役 王 勇(理学博士)
本社 堺市北区長曽根町130-42
さかい新事業創造センター104号
TEL 072-257-3505
設立 2007年設立
資本金 2億3,544万円
従業員数 5名
事業内容 LiNTECを用いたナノ製剤の開発事業、新薬関連企業へのLiNTEC技術提供による創薬支援事業
ホームページ http://www.absize.com/

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