地元企業・支援情報堺IPC PRESS
バックナンバー

堺IPC PRESS 2025.4 Vol.75

PICKUP!

いよいよ4月13日に開幕する大阪・関西万博。今号と次号は万博開催記念として、堺市内から技術の出展や協賛で参加する企業をご紹介します。

  • 株式会社アキボウ
  • 中川木材産業株式会社

株式会社 羽車

株式会社 羽車 代表取締役 杉浦 正樹

12色刷の活版印刷を万博へみんなを一つにまとめる推進役

代表取締役 杉浦 正樹

紙を使った温かみのあるコミュニケーションの創出を目指して

1918年に、「杉浦封筒工業所」として封筒やのし袋、荷札などの製造で創業してから百年余り。今日では、「お客様のブランド力を高め、その良さを世の中に伝えるお手伝い」を事業目的の一つとして、企業向けには事務用封筒をはじめ、ブランド構築の一端を担うパッケージや冊子といった紙製品の企画・デザインから製造までを行っています。
 また、個人向けにもグリーティングカードなどを展開する「ウイングド・ウィール」を1999年に設立、多くのファンを獲得しています(現在はハグルマストアで案内中)。
 同社では、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンに5月27日から6月2日まで「活版印刷による12色刷りのアート作品」を出展することになっており、そのプロジェクトリーダーが、事業推進室の炭谷真希マネージャーです。杉浦正樹社長も「今回の万博や新規事業の立ち上げなど何か大きな一歩を踏み出すときには、炭谷に任せることが多いですね」と大きな信頼を寄せています。

炭谷 真希マネージャー
小さい頃からの紙好きが高じてモノづくりの価値観が合う羽車へ転職

 小さい頃からメモ帳などの紙ものが大好きだったという炭谷マネージャーは、卒業後に就職した文具メーカーを経て、2006年に羽車に入社しました。そのきっかけは、「ウイングド・ウィール」に出会ったことだと言います。
 「とても良い製品を作っている会社があるんだなと思いました。ちょうど転職を考えていた頃で、こうした自分の価値観と合うモノづくりをしている企業で働きたいと考えていたら、偶然に求人があって応募しました。本当はデザイナーが欲しかったようなのですが、デザインはできなくてもコンセプトや企画づくりで役に立てればと考えたのです」。
 同社の企業文化や価値観をよく理解していると杉浦社長から評価されている炭谷マネージャーですが、それもそのはず、入社と同時に社長直轄の部署で、杉浦社長から直接、同社のモノづくりの考え方などを学んだそうで、「その考え方を社員みんなで実現させようとしているところも当社の良いところです」と語っています。

2024年2月に完成した同社1階にあるショールームでは、商品展示のほか商談スペースも設置。
「とりあえず一歩踏み出す」の精神で前例のない12色刷りを実現

EXPO’70が、人を喜ばせることがこれほど面白いことなのかに気づいた原体験だったと語る杉浦社長。今回の万博出展も「一番の目的は、社員に喜んでもらいたかったから。そして、最新技術が多く出展される万博で、逆にアナログの温かさを感じさせる技術を訴求したいと思いました」と語っています。そこで、炭谷マネージャーたちが企画したのが、「活版印刷の12色刷りアート作品」でした。
 これまでは多くても2~3色だったという活版印刷の12色刷り。苦労した点について、炭谷マネージャーは「まず、活版印刷ならではの質感、つまり凹みを美しく表現する紙の選定に苦労しました。次に12版も重ねると、紙がわずかに伸びて版ズレを起こすので、それを合わせるのに製造スタッフはとても苦労したと思います。テストに3~4ヶ月はかかりました」と語っています。モチーフはだるまや鶴、獅子舞といった日本の伝統的な縁起物で、全72種類。活版印刷の凹凸感が紙のやわらかさや独特の風合いを表現しています。
 「炭谷は社員からの人望も厚い」(杉浦社長)という炭谷マネージャーが心がけているのは、「何かを始める時、悩んでいてもゼロのままなので、とりあえず一歩を踏み出します」。同社の原動力を担う一人です。

12色刷りを実現した約60年前に製造されたドイツのハイデルベルグ社製の活版印刷機。美しい仕上がりは社員の厳しいチェックがあってこそ
(株)羽車の人材戦略

一緒に働きたいかを評価 それが会社を強くする
当社では、一般的な「業績評価」はほとんど行いません。その代わりに、「一緒に働きたいと思える人柄」を大切にしています。10年ほど前から、社員同士で「こういう人と働きたい」という10の価値観を決め、それを基準に評価する仕組みを取り入れています。人生の中で仕事をしている時間は長い。その時間を、互いに尊敬し合い、気持ちよく働ける仲間と過ごせる会社は強いと考えています。

株式会社 羽車

代表者名 代表取締役 杉浦 正樹
本社 堺市東区八下町3-50
TEL 072-251-2211
設立 1918年創業 1936年設立
資本金 5,200万円
従業員数 160名
事業内容

封筒・紙製品の企画・製造・販売、インターネットによる通信販売

ホームページ https://www.haguruma.co.jp/
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=1006

中川木材産業株式会社

中川木材産業株式会社 代表取締役 中川 勝弘

思いのある万博に
ミニステージ用のデッキ材で協賛

代表取締役中川 勝弘

今ではよく見かける住宅用ウッドデッキや屋外の木造景観施設を他に先駆けて手がけてきた中川木材産業株式会社。大阪・関西万博では、サプライヤーとしてポップアップステージのデッキ材を提供したほか、施工にも携わっています。

ウッドデッキや木造景観施設のパイオニアとしての強みを発揮

1911年の創業時より、木材一筋に100年を超える歴史を重ねてきた中川木材産業株式会社。現在はゼネコンやハウスメーカーなどを得意先とする土木・仮設材部門をはじめ、丸太・造園部門やエクステリア部門、土木景観施設工事、一般の方向けのDIY商品も手がけています。
 同社の強みは、フィールドアスレチックや住宅用ウッドデッキ、屋外景観施設など、木材を活用した製品の企画・開発力で、これらの製品をいち早く手がけてきたパイオニアです。
 「木材製品、木造施設というのは、すぐにノウハウが盗まれます。例えば、当社が独自に企画・設計したウッドデッキや、一般の方が自分で組み立てられるキットデッキも売れるとわかればすぐに模倣され、価格を下げた類似品が出てきたりしました。それでも見えないところで、経年による強度の低下を抑える特許工法を2つ有していることが当社の強みとなっています」と中川勝弘社長は語っています。
 屋外の景観施設についても、有名テーマパークで同社の木材や施工技術が多く採用されています。
 「この大型プロジェクトに、どこか一区画でも関わることができないかと、私が自ら飛び込み営業をしました。小さなデッキの工事を受注したのがきっかけで、その隣、その隣と工区が広がり、最終的にはかなりのエリアに携わることができました。現場で当社の提案や施工技術の高さが評価されてのことだと思います」。
 こうした実績が、今回の大阪・関西万博でも活かされることになりました。

同社2階には、得意とするウッドデッキのショールームがある。
人生の転機となったEXPO'70博覧会には積極的に参加

「大阪・関西万博の開催が決まり、個人的にも寄付を行いましたが、会社としても何か関われたらと考えていました。ある設計事務所から見積もりの話があり、そのやりとりの中でサプライヤーとして木材の提供を打診されました。私自身、人一倍万博への思い入れがあり、協賛することにしたのです」。
 その中川社長の万博への思い入れとは、1970年に開催された大阪万博(EXPO’70)の万博協会で、最年少職員として運営に携わった経験にありました。
 「当時は言葉ができず、なかなか馴染めなかったなかで、インドネシアの皆さんと親しくなり言葉を教えてもらいました。万博期間中に簡単な会話ができるぐらいまで習得し、その後、商社に就職した時はインドネシアに赴任しました。今もその交流は続いています。私の人生の転機となった出来事でした」と語っています。
 こうした中川社長の個人的な思いとは別に、中川木材産業もEXPO’70では杭などの仮設材の提供で関わっていました。その時に先代社長が「当社の仕事が表から見えないのは残念」と語ったことから、中川社長は「今度は人の目に付くところで」と多くの博覧会に積極的に携わってきました。なかでも国際花と緑の博覧会では、政府館のトラス材やメインデッキなどの企画・設計、施工を担当したほか、パビリオン内のイベント企画まで担当しています。そうした豊富な実績からか、大阪・関西万博でも、木材の協賛だけでなく有償で施工も任せられることになりました。

同社がデッキ材を協賛したポップアップステージは、東ゲート近くに設けられる。
再利用を考えた独自の規格で国産スギ材を採用

今回、大阪・関西万博で同社が手がけたのは、ミニイベントが行われるポップアップステージのデッキ部分です。
 「かつて世界リゾート博や花博でも行ったことですが、開催期間の短い博覧会で使われる木材は、環境保全の観点から解体後の再利用を考えています。今回はその後利用を踏まえた当社独自の規格を採用しました。
 また、国が国産材の使用を推奨しているなかで、今回、国産のスギ材を使用しています。通常は耐用年数が短いスギ材をデッキ材にすることはなく、業界では非常識なこととされますが、期間が限定的な万博だからこそと考えました」。
 万博に参加することのメリットについて「直接的な効果については不明ですが、信頼性の向上にはつながると考えています」と中川社長。さらに今回の万博では、大屋根リングなど木材を使った建造物が象徴的に使われており、長く中川社長が訴えてきた木という素材がいかに環境への負荷が少なく、これからの時代にも大いに活用されるべきものであるかということを、多くの人が認識してくれるのではないかと期待を寄せています。

経営のキモ

ウッドデッキや景観施設のパイオニアとして、創業100年以上の歴史で培った独自技術と、特許工法を活かした高耐久な木材製品が同社の強みです。環境保全と再利用を重視し、万博をはじめ多くのプロジェクトで実績を残しています。

中川木材産業株式会社

代表者名 代表取締役 中川 勝弘
本社 堺市美原区木材通1-11-13
TEL 072-361-5501
設立 1911年創業 1953年設立
資本金 2,640万円
従業員数 13名
事業内容

木製品製造・販売、土木用木材の販売

ホームページ https://wood-deck.com/
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=31463

株式会社アキボウ

株式会社アキボウ 代表取締役社長 西木 一彦

スタッフの移動用に
未来感のあるEバイクで協賛

代表取締役社長西木 一彦

昨年、創業80周年を迎えた株式会社アキボウ。スポーツ自転車の輸入卸販売だけでなく、自社独自の商品開発も行っています。大阪・関西万博では、折りたたみ式Eバイクで協賛。広い会場内のスタッフの移動をサポートします。

「ものづくり商社」として日本人に合った製品も自社開発

 1944年の創業当初は、日本で製造された自転車の部品や完成車の輸出を行っていたという株式会社アキボウ。1970年代のオイルショックやプラザ合意による急激な円高を経て輸出事業が難しくなり、逆にそれまで部品の売り先であったヨーロッパの自転車メーカーから完成車を輸入するようになったといいます。1989年のことでした。
 「当社は、すでに部品のサプライヤーとして海外のメーカーとのネットワークを構築していましたし、国内に目を向ければちょうどバブル経済の真っ只中で、ユーザーには経済的に余裕があり、また自転車の先進地であるヨーロッパへの憧れもありました。そこで時代の流れは輸出から輸入だということで、スポーツ自転車の輸入卸販売をスタートさせたのです。
 その後、取扱いブランドをどんどん増やす一方、ヨーロッパ人とは体格も感性も違う日本人には、日本人に合ったサイズ感やデザインがあるのではないかと考え、『ものづくり商社』として、自社独自の製品開発も進めています」と西木一彦社長は語っています。
 その”ものづくり”を担っているのは、大阪港にあるアキボウQCセンターです。製品の品質管理から万一の品質問題への対応、そして海外メーカーや新たな製品開発へのフィードバックまでの役割をここに集約させています。ユニークなのは、既成概念にとらわれることのない製品開発を進めるべく自転車業界の出身でない技術者も積極的に採用していることです。そこで誕生した製品の一例には、昔に大流行したマウンテンバイクのモデルを最新の仕様でオマージュした製品があり、製造が間に合わないほどの大ヒット商品になっています。

2023年に開設された、自転車のある暮らしを楽しむための情報サイト「SHIFTA」。
https://shifta.jp/

本社では、新製品の企画や営業・販促、事務業務などを担っている
協賛がスタイリッシュなEバイクへの関心につながれば

 ところで同社は、大阪・関西万博にサプライヤーとして、未来社会ショーケース事業のスマートモビリティ万博で、スタッフの移動用モビリティを無償提供(貸与)しています。採用されたのは、折りたたみ式Eバイク「VICCI(ヴィチ)」です。
 博覧会協会への担当窓口を務めた国内営業部の山本雄彦さんは「初めて協会に声を掛けたのは2022年11月でした。会場内はもちろん、その周辺の移動にも自転車が便利なのではないかと何種類かの自転車を提案させていただいたのですが、最終的に万博仕様に仕上げたVICCI6台を無償貸与することになりました。
 VICCIを提案した理由は、身長や体格、性別を選ばず、誰もが安心して乗れる設計になっていることと、万博にふさわしい未来感があるところです。さらに折りたたむとテーブルの下にも収納できるコンパクトさと、Eバイクにしては軽量で持ち運びやすいことも採用された理由だろうと考えています。
 スタッフの詳しい動線は聞いていませんが、来場者の目に全く触れないわけでなく、走行しているスタイリッシュなVICCIを見て、関心を持っていただけることがあれば嬉しいですね」と話しています。

製品の品質管理や整備、新製品の開発などを担っている「アキボウQCセンター」。
環境保全に貢献するマイクロモビリティの普及へ

 大阪・関西万博に協賛することへの思いを、西木社長に伺いました。
 「当社は、大阪ヘルスケアパビリオンのリボーンチャレンジにも次世代ライフスタイルモビリティを出展する予定です(出展期間:9月2日~8日)。それに向けては、各部署からのメンバーで横断的に組織した万博プロジェクトチームを立ち上げましたが、メンバー以外の社員からも意見を聞くなどして、全社で万博に対する関心を高めてきました。EXPO’70のように、今回の万博も今年で終わらず、長く語り継がれていくことでしょう。その大舞台に当社が関わらせていただけたのは光栄なことです。
 万博のテーマにも”未来社会のデザイン”とありますが、これからの未来にEバイクはマイクロモビリティというカテゴリーの中でますます広がっていくでしょうし、進化しなければならないと考えています。
 また、昨今の異常気象を考えても環境保全はグローバルな課題です。当社の企業理念に『グローバルな舞台で人々の健康と地球環境保全に貢献する企業』を掲げていますが、マイクロモビリティをもっと活用することが地球環境の保全に貢献することをこれからも訴えていきたいと思っています」。

経営のキモ

海外とのネットワークの強みを活かし、既成概念にとらわれずに異分野出身の技術者も参加し国内市場向けにカスタマイズするビジネスモデルを構築。ものづくり商社として自社独自の製品開発を進めていることが同社の強みです。

株式会社アキボウ

代表者名 代表取締役社長 西木 一彦
本社 堺市北区中百舌鳥町5-758
TEL 072-258-4005
設立 1944年設立
資本金 6,650万円
従業員数 49名
事業内容

自転車とその部品・アクセサリーなどの輸入、国内卸売販売、自動二輪の部品・付属品の輸出入、不動産業

ホームページ https://www.akibo.co.jp/
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=21664