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堺IPC PRESS 2025.10 Vol.77
PICKUP!
人材確保
中小企業における人材確保や育成は大きな課題です。
今号は独自の方法で新卒採用に成果をあげたり定着率を高めたりしている企業を紹介します。
- 株式会社ビー・ティー・アイ
- 新洋海運株式会社
- 関西触媒化学株式会社
株式会社ビー・ティー・アイ
売上や営業利益など数字は全て公表
利益は社員に還元
代表取締役社長西谷 則行
半導体や食品関係、水処理施設など高い信頼性が求められる分野で、プラスチックやウレタンゴムの超精密加工を得意とする株式会社ビー・ティ・アイ。人材確保に悩む中小企業が少なくない中で、社員の定着率が非常に高い企業です。
- 半導体関連などプラスチックの超精密加工に強み
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1978年に初芝樹脂工業所として創業した当初から、プラスチックの加工を手がけてきた株式会社ビー・ティ・アイ。コンピュータ制御のNC旋盤やマシニングセンタなどの機械設備を40台以上備え、少量多品種から数千個単位の量産品まで対応しています。三次元測定機や輪郭形状測定機なども導入し、より厳密な品質管理を行っており、得意先企業から高い信頼を得ています。
同社では創業当時から、商社などを介さずに直接営業を行い、全国に得意先を広げてきました。なかでも半導体関連の企業の多い九州エリアからの売上が、全体の半分以上を占めるまでになっています。こうして事業を広げるにあたり、重要なのが人材の確保です。
「当社の一番多い採用ルートは『さかいJOBステーション』で、すでに約10名の社員を採用しています。直接、求職者と交流できる機会を作ってもらえるので、ミスマッチを防げるのがいいですね。会社見学の時も、最初の会社説明は私が行いますが、社内見学と質疑応答は社員に任せています。その方が求職者の方も遠慮なく質問できると考えており、当社の実像をきちんと知ってもらうことで、後の離職を回避できていると思います」と西谷則行社長。残す課題は、今後注力していきたい営業活動を担う人材の採用だとか。
「現在の営業担当の4名中3名が新卒採用でしたが、現在は難しくなり、キャリア採用で確保できればと考えています」。
同社は、北海道への展開を図るため、この秋に道内で開催される展示会に出展予定。 - 社員のやり甲斐を重視 頑張ったことが給与に反映
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中小企業における採用難や転職による離職が大きな課題となっている中、同社の離職率の低いことが注目されます。
その理由について、西谷社長は「経営者の一番の仕事は利益を出すことですが、あわせて社員がやり甲斐や、働き甲斐を感じられる会社にすることも大切だと思っています。経営理念の一つにも『社員全員が幸せで、やり甲斐の持てる企業となる』を掲げており、そのためにまず、売上や利益といった数字を公表しています。
あわせて今期の目標数字を示していますが、その目標を自分事として捉えてもらうために、年に2回、4月と10月に営業利益の2割を決算賞与として社員に還元しています。社員の頭数で公平に分配しますので、管理職から新入社員まで全員が同額です。当社では毎日の受注金額と仕入れ・外注費、累積利益をボードに掲示していますが、社員たちはみんなで営業利益を出すように協力し合っており、毎年業績は伸びています」。
加えて同社では、給与体系を明確にしていることも働き甲斐につながっているようです。
「入社してからの3年間は教育期間と考えていますが、4年目からは社員一人ひとりをプロと見なし、年俸制を導入しています。しっかり自分を成長させて貢献したことを給与に反映させようという考え方です。ちなみに年俸制といっても、一般社員は前年から給与が下がることはありません」。
マシニングセンタやNC旋盤など、関西最大級の生産設備でお客様の多様な要望に応え続ける。 - 管理職の給与の上限額を明示 ライフプランを描きやすく
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特にユニークなのが、課長職以上の役職については上限額を定められているものの、自身のこの1年間の成果を踏まえた給与額を自己申請できることです。
「その成果の評価ポイントは、自分自身でなく、いかに部下などまわりを成長させたかです。それを示す資料の提出とともに自己評価額を申請してもらい、取締役の了承を経て決定します。一方、取締役は経営責任があるので、業績が下がった場合は連動して給与が下がります。
課長職以上の給与の上限額を公開していることについては、20代、30代の社員が、この会社での自分の将来像をイメージするのに役立っています。頑張れば頑張っただけの給与を申請できるので、個人的なライフプランを描くことにもつながっており、『役員をめざす』と言っている若い社員もいますよ」。
働き甲斐を感じた社員たちからは、自分の息子や友人たちを入社させたいという申し出が寄せられるといいます。
「経営者としては、本当に嬉しいですね。社外で自社の社員のことを悪く言うような経営者がいますが、そういうことは伝わるものです。当社の好業績も社員の頑張りのおかげ。感謝しています」。
社員の自発性を尊重し、ホームページのリニューアルから忘年会まで、社員による委員会が企画・運営している。
経営のキモ

同社の最大の強みは"ひと"。関西最大級の設備と自ら動く力を武器に、お客様の声を反映した多彩なものづくりを実現。半導体や食品、水処理分野で培った超精密加工技術と徹底した品質管理力を強みに成長を続けています。
株式会社ビー・ティー・アイ
| 代表者名 | 代表取締役社長 西谷 則行 |
|---|---|
| 本社 | 堺市美原区木材通1-10-8 |
| TEL | 072-362-2550 |
| 設立 | 1978年創業 1988年設立 |
| 資本金 | 2,500万円 |
| 従業員数 | 40名 |
| 事業内容 | プラスチック・樹脂加工 |
| ホームページ | https://www.bti-2.co.jp/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=8855 |
新洋海運株式会社
サッカー部を有効な採用ルート
として戦略的に活用
取締役 常務執行委員 営業本部長 兼 海外事業部長高 景保
国際輸送をはじめ、輸出入に関する通関手続きや倉庫保管、国内輸送、保険業務代理などを一元的かつ総合的に担う新洋海運株式会社。40数年前に立ち上げたサッカー部が現在、採用ルートとして大きな役割を果たしています。
- 最適な輸送手段などを提案する「国際物流のコンシェルジュ」
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昨年、創業70周年を迎えた新洋海運株式会社。豊富な実績とノウハウに裏打ちされた現場力を活かし、顧客のニーズに則した最適な輸送手段、輸送ルートを提案する「国際物流のコンシェルジュ」としての役割をより強化していきたいと考えています。特に、ベトナムとタイに現地法人を有し、アジア・アセアン地域に強固な物流ネットワークを構築しており、東南アジアに進出する堺のものづくり企業の設備の運送や現地通関、製品の輸送などをサポートすることも増えているそうです。
また、ESG経営にも注力し、カーボンニュートラルの取組の一つとして、顧客のタイヤメーカーなどとの共同スキームでトラックによる製品輸送の7割を内航船による海上輸送にシフト。CO2の削減に貢献したと、今年6月に「第26回物流環境大賞」の「低炭素物流推進賞」を受賞しています。
来期から10年間の「長期ビジョン」と、それを踏まえた中期経営計画を策定中の同社では、その中で新たな人材戦略も立てているところです。髙景保取締役は「これまでは、部署ごとの欠員補充のような形での人材採用でした。しかし長期ビジョンで、理想とする10年後の姿を決定するにあたり、現時点でどのようなスキルやキャリアを持った人材がどれだけ足りていないのか、棚卸し作業を行っています。その結果によって、必要な人材を社内で育成するのか、新たに採用しなければならないのかを整理する予定です」と語っています。
- 同好会だったサッカー部が新卒採用の窓口に
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中小企業の新卒採用が難しいとされる昨今、同社も例外ではないといいます。4年前までの実績では新卒採用の方が多かったものの、翌年からは逆転し、昨年は新卒3名、キャリア採用が6名となりました。
「キャリア採用は、転職ブームだからか、求人サイトで募集すると結構な反応があります。ただ、国際物流と聞けば、華やかなイメージを持たれるかもしれませんが、実際は物を動かすための手続きなど、裏方の地味な仕事です。入社してから実際の仕事と認識のズレが生じないよう、丁寧な説明を心がけたいと思っています」と髙取締役。
一方、新卒採用については、昨年と今年で3名ずつの入社があり、その全員が、40数年前に社員の交流の場として立ち上げたサッカー部が縁となり、入社に至っています。
「1980年代に、当時の社長が同好会として作ったもので、業務から離れて自由に交流できる場を作るのが目的だったようです。
その社長が堺市サッカー連盟の理事長を長く務めていたこともあり、いろいろな高校や大学のサッカー部の監督とつながりができ、そのサッカー部から当社へ入社する学生が出てきたのです。実は、1995年入社の私もその一人です(笑)」。
髙取締役をはじめ、サッカー部から入社した社員の多くが重要なポストで活躍している。 - 企業は「選ぶ」時代から「選ばれる」時代へ
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驚くのは、一昨年からそのサッカー部を採用ルートとして戦略的に活用していることです。
「2000年頃からレベルの高い選手が入社するようになり、なかには高校サッカー強豪校出身で、全国ベスト4の経験を持つ社員もいます。そこで、大阪府社会人リーグにも入りました。4部からのスタートでしたが、2008年に1部リーグに昇格し、3位に入賞したこともあります。
ただ当時は、会社からの支援はユニフォーム代など年間数十万円程度でした。やがて建設業界への転職者が複数名出るなどしてサッカー部の士気が下がり、廃部も考えたのですが、私としてはむしろ、会社の援助を数百万円まで増やして専任の監督やコーチを雇用し、プロに行きたいけれど行けない、試合に出たいけれど出られない学生たちの受け皿にすることにしたのです。それが2024年2月からのことです。
今では社員だけでなく、学生たちもチームに所属しており、そこで社員と交流するなかで、当社に興味を持って入社してくれる学生たちが出てきました。サッカー部も一度は2部に降格しましたが、2023年に再び1部に昇格しています」。
髙取締役は、この採用難の時代に企業側も考え方を変えなければならないと語っています。「企業が選ぶ時代ではなく、選ばれる時代になりました。従業員にどういうスキルやキャリア、経験を提供できるのか。従業員満足度を高めることが重要です。ひいては、それが企業の付加価値向上に繋がると考えています」。
更に上のカテゴリーへの昇格をめざし日々練習をする新洋海運F.Cのメンバー
同社倉庫を利用してニーズに合わせたジャストインタイムな配送が可能に。
経営のキモ

国際輸送から通関・倉庫保管・国内輸送・保険代理までの一貫体制と東南アジアに広がる拠点ネットワークを基盤に、顧客ニーズに即し、かつ顧客の成長戦略に寄り添う最適な物流を提案・実現していることが同社の強みです。
新洋海運株式会社
| 代表者名 | 代表取締役 社長執行役員 稲葉 徹志 |
|---|---|
| 本社 | 堺市堺区大町東1-1-10 |
| TEL | 072-238-1161 |
| 設立 | 1954年設立 |
| 資本金 | 1億円 |
| 従業員数 | 135名 |
| 事業内容 | 国際輸送、輸出入、通関、倉庫・配送、内航、損保代理店 |
| ホームページ | https://www.shin-yo.co.jp/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=11100 |
関西触媒化学株式会社
会社の将来を見据え、
新たな柱となるシーズ開発を主導
代表取締役社長箕浦 義基
- 国内有数の高度な技術力で幅広い産業分野に機能性材料を提供
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1947年の創業以来、さまざまな産業分野でキーマテリアルとして使用される化学工業薬品を開発、製造してきた関西触媒化学株式会社。同社の主力製品である球状水酸化ニッケルを実現した球状化技術や異種元素固溶技術など、国内有数の技術力を誇っています。
とりわけ近年は、電池材料で強みを発揮してきた同社ですが、数年前から進めていた「発電用タール改質触媒およびバイオマスガス化発電システムの開発・実証」に成功しました。大阪・関西万博でも、未来の暮らしや未来への行動をテーマとしたパビリオン「フューチャーライフビレッジ」で、その成果を10月に出展します。このプロジェクトを主導したのが、開発部の大谷昌司係長です。
箕浦義基社長は「当社はこれまで主力事業である電池材料の研究開発に注力してきましたが第2、第3の柱を作る必要もあります。そこで、電池材料以外で潜在的なシーズの開発に取り組んでいるのが大谷です。彼は大学や研究機関、研究者などと積極的に接触し、良好な関係を築きながら共同開発を進める能力に長けており、そうした社外関係者からの信頼や評価も高いですね」と語っています。
関西触媒化学株式会社 開発部係長 大谷 昌司
電池や電子部品、触媒、表面処理、顔料、試薬など幅広い分野でキーマテリアルとして使用される製品を提供する同社。 - バイオマスガス発電の課題に着目しタール改質触媒を共同開発
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「大学時代から他学部の友人の話を聞くのは好きでしたし、社会人になった今も研究職の友人たちとの交流の中から、シーズを発見することはあります」と大谷係長。先述のバイオマスガス化発電システムも、大阪産業技術研究所(以下、大阪技術研)との共同研究でした。
「大阪技術研の担当者が大学の後輩で、カーボンニュートラルな燃料として注目されるバイオマスガス発電ですが、ガス化する際に発生するタールが配管を閉塞させることが大きな課題だという話になったのです。そこで、発生したタールを分解するタール改質触媒を共同開発することとし、まず大阪技術研がタール改質触媒の基本原理を開発。私たちは、その触媒の改良と量産技術の開発を担いました。最も苦労したのは触媒の強度向上で、粉体のまま使えない触媒を”転動造粒”という手法で土台となるアルミナボールにコーティングしたのですが、どうしても触媒粉が剥がれやすく、クリアするのに約1年かかりました。その時に開発した添加物は、大阪技術研と共同で特許出願しています」。
同システムは現在、メーカーとともに製品化を進めているところで、早ければ来年度にも発売される予定です。
「バイオマスガス化発電」を活用しての持続可能な地域づくりをイメージしたジオラマ。 - ナノ材料への興味から入社 好奇心のままに潜在的なシーズ開発を
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ところで、大谷係長が関西触媒化学に入社したきっかけは、まだ大阪府立大学(当時)の学生だった時に、共同でナノ水酸化ニッケルの研究を進めていた同社のインターンに参加したことだったとか。「ナノ材料はさまざまな分野で期待されており、私自身も興味があったので、そのまま入社を希望しました。入社後、初めは戸惑ったほど、自由に研究させてもらえる環境で、自分の好奇心のままに仕事ができて本当に楽しいです」と笑顔で語ってくれました。
箕浦社長は「新規事業というのは10年、20年とかかって一つ生まれるかどうかだと思いますが、今回の成功体験により新たなインスピレーションが働いて、また面白いものを生み出してくれるのではないかと期待しています」と語っています。
「X線回折装置」などを備えて、常に新たな技術開発に挑んでいる。
経営のキモ

社員が活躍できる環境とチャンスの提供を重視
当社では採用後に、社員がいかに活躍できるようにするかということを重視しています。型にはめるのではなく、自分で考えて成功も失敗もたくさん経験できるような環境とチャンスを与えたいと考えており、それが定着率と技術開発力の向上につながり、当社の強みになっていると考えています。
関西触媒化学株式会社
| 代表者名 | 代表取締役社長 箕浦 義基 |
|---|---|
| 本社 | 堺市堺区柏木町1-3-13 |
| TEL | 072-241-6200 |
| 設立 | 1947年創業 1957年設立 |
| 資本金 | 3億280万円 |
| 従業員数 | 92名 |
| 事業内容 | 化学工業薬品、二次電池用正極材、電子部品材料、金属表面処理剤、触媒用各種薬品の開発・製造・販売 |
| ホームページ | https://www.kansyoku.co.jp/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=2919 |
SAKAIもの新発見
辻寛敷物株式会社
職人の手でパイルを打ち込む手刺し絨毯
手刺し絨毯とは、基布と呼ばれる綿布に職人がフックガンという道具を使用し、少しずつパイルを打ち込んで製作する絨毯で、機械織りと比べて毛足が長くパイル密度が高いため、踏んだ瞬間に靴の裏から伝わる重厚感でそれとわかります。ホテルや旅館、社長応接室など、高
級感を重視する場所でよく採用されています。
製作にかなりの手間と時間を要するため高価格になりますが、防音性と耐久性に非常に優れているのが特長で、ある旅館から前と同じ柄でとリピート発注を受けたのが30年ぶりだったということもあったそうです。
機械織りと異なり使える色数に制限がないことや、変形にも対応でき、必要な数やサイズで製作できることもメリットです。
場合によっては機械織りのロールで製作するとロスが大きく、手刺し絨毯の方がコストパフォーマンスが高かったというケースもあるとか。
職人技の生きる製法ということで、辻寛敷物では技術者の継承を重視し、マンツーマンで半年から 1年をかけて指導。現在は 30代から 70代までの幅広い世代の職人が活躍しています。
| 代表者名 | 代表取締役 髙橋 健一 |
|---|---|
| 本社 | 堺市中区東山831-10 |
| TEL | 072-239-5001 |
| 設立 | 1935年創業、1975年設立 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 10名 |
| 事業内容 | 手刺し絨毯の製造、販売 |