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堺IPC PRESS 2024.4 Vol.71
PICKUP!
「人材を育む」「新事業を育む」――
育むものは違っても、その対象への熱い思いがなければ成長はないことを特集企業等から教えていただきました。
- 社会福祉法人 上神谷(にわだに)福祉会
- 株式会社陸水
- 角野晒染株式会社
社会福祉法人 上神谷(にわだに)福祉会
職員たちからのプレゼンをきっかけに人材育成に注力
施設長上野 貴広
堺市南区で特別養護老人ホームをはじめ、ケアハウスやデイサービスセンターなど、総合的に福祉施設を運営している上神谷福祉会。職員の働きがいを引き出し、ひいてはより質の高い介護サービスにつながるよう、丁寧な「人材育成」を進めています。
- 4形態の福祉施設が連携して高齢者のあらゆるニーズに対応
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特別養護老人ホーム槇塚荘やケアハウス逆瀬川、グループホーム高倉、そして赤坂台デイサービスセンターと大きく4形態の福祉施設を運営する上神谷福祉会では、「お元気な方から24時間体制での介護を必要とされる方まで、全ての高齢者のニーズにお応えできるほか、各施設が連携しているので、ご利用者の状態に応じて適切なサービスが受けられるよう別の施設へ円滑に移っていただくこともできます。お一人の方と長くお付き合いできることも当会の強みの一つ」と上野貴広施設長。
前職で住宅設備メーカーの営業をしていたという上野施設長は、福祉業界の特異性に最初は戸惑ったと言います。「私が入社した頃はまだ措置制度が残っていて、ご利用者のほうが利用にあたり頭を下げられているのに驚きました。それが介護保険制度の導入により、施設が選ばれる時代になり、当時の福祉業界では珍しい営業担当を設けました。よそを見ることで自分たちの施設を客観視できればと現場の介護職員や事務職も同行させました」。
そして急速に高齢化が進むなか、当福祉会でも大きな課題となったのが人材不足です。懸命に採用しても、一方で離職していく。当初、それは仕方のないことだと思っていた上野施設長が、ある出来事をきっかけに、人材を「育てる」ことに本気で取り組み始めたといいます。
我が家のダイニングキッチンにいるかのような温かい雰囲気で、食事ができるユニットケア施設の食堂。 - 職員たちの危機感から人材定着に向け研修体制を確立
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「約7年前ですが、突然に職員有志から『離職者ゼロ運動』と題されたプレゼン資料を渡されました。そこには人材の採用よりも定着に注力すべきだと説かれていたのです。『一緒に会社を変えていきたい』と言われて、共に会社のことを考えてくれる仲間がいたのだと本当に嬉しかったですね」。
施設長へのプレゼンを実行した介護支援専門員の上原栄里奈さんと生活相談員の宮本康平さんは当時を振り返って「あの頃、仲間の一人が退職を考えていることを知り、良い人材が辞めていく原因は何なのか。今、どうにかしないと手遅れになると危機感を持ったんです」と語ります。
「問題は人材育成のシステムが確立していないことだと思いました。現場での指導は全てその日その日の担当者任せで、手間ばかりかかって成果が見えない。それに疲れている中堅職員が多かったんです」。
そして現在、当福祉会の人材育成の体制は「入社1年目」「入社2年目」「入社3年目以降」ときめ細かく整備されています。特に1年目は、高齢者との関わり方を学ぶためデイサービスでの「コミュニケーション研修」や、1人の新人に1人の専任指導者を一緒の勤務に入れて介護の基礎を身につける「チューター制度」の他に先輩職員との交換日記や、上野施設長や上原さんたちとの定期的な面談もあり、不安感の払拭に役立っているようです。
(特養)槇塚荘に取材で訪れた人気介護ユーチューバー(中央)と槇塚荘の若手職員。 - ICTや機械の活用で介護をクリエイティブな仕事に
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こうした取り組みにより、離職率がかつての10数%から2~3%まで低減し、介護職についてはもう何年も中途募集していないそうです。人材が定着することで余力が生まれ、新しいことにもチャレンジできると上野施設長。例えば、国が進める介護業界におけるICTの活用事例の一つとして、ベンチャー企業が開発中だった排泄センサーの実証実験に協力しています。
「介護負担が最も大きい排泄ケアの労力軽減につながればと、データの提供や改善点の提案などに協力しました。それまでも私たちは、超音波で膀胱の動きを捉え、その方の排尿パターンを予測し、いち早くケアを行う取り組みを進めていましたが、この排泄センサーは匂いで排便もすぐに検知するもので、現場での検証を経て昨年10月に発売されています」と上原さん。
職員の働きやすい環境づくりの一環としてリフト機器の導入などを進めてきた上野施設長は「肉体労働でつらいというイメージの介護職をもっとクリエイティブな仕事にしなければと考えています。機械ができることは機械がすればいい。職員の経験や勘だけでなく、明確な根拠に裏打ちされた創造性の高い介護職の魅力を、これからも当会から発信していきたいですし、それが職員の働きがいとなり、ひいてはご利用者への質の高いサービスにつながると確信しています」と語っています。
人材育成もかねて専門学校の学生にノーリフトケアなどの勉強会も行っている。
経営のキモ

上野施設長と職員が一致団結し、人材の採用よりも定着に注力した「人を育てる」仕組みづくりを進めてきました。ベンチャー企業との新たな介護用のシステムの開発にも乗り出すなど、「職員がワクワクできる」が当所のテーマです。
社会福祉法人 上神谷(にわだに)福祉会
| 代表者名 | 理事長 上野 健治 |
|---|---|
| 本社 | 堺市南区逆瀬川1038-2 |
| TEL | 072-291-0920 |
| 設立 | 1994年設立 |
| 資本金 | |
| 従業員数 | 160名 |
| 事業内容 | 福祉・介護関連サービス |
| ホームページ | http://www.makiduka.jp/ |
| さかしる掲載ページ |
株式会社陸水
大消費地・大阪でフグなどを陸上養殖 圧倒的鮮度が武器に
代表取締役奈須 悠記
四方を海に囲まれた日本の、しかも漁港のすぐそばで、あえて陸上養殖を創業したのは株式会社陸水の奈須悠記社長です。鮮魚の大消費地である大阪の近郊で「育む」からこその高い鮮度という価値を訴求し、多くの飲食店などから好評を得ています。
- 近大マグロで習得した陸上養殖のノウハウで創業
-
奈須悠記社長が水産業に関心を持ったのは、高校3年生の時にたまたま観たテレビ番組だったと言います。
「マグロの漁獲量が減少していて、このままだと口に入らなくなるかもしれないが、近畿大学が養殖に成功したマグロなら食べ続けられるという内容で、これは面白いと、急遽進路を変更して近畿大学の水産学科に入学しました。
卒業後、大手の水産加工食品会社で海面養殖事業に携わったんですが、養殖のための稚魚が台風や病気などにより安定して確保できず、この養殖方法に未来はあるのかと不安になりました。では、環境に左右されない養殖方法は何かと考えると陸上養殖だったんです。学生時代に関わった近大マグロは大きく成長するまでは陸上養殖なので、設備や手法はおおよそわかっていました」。
そうして陸上養殖で創業したのが2021年。養殖事業所を大阪府岬町に設けたのは、大消費地の近くで養殖を行うことで活魚の運送という物流費を低減できるため、陸上養殖のデメリットである多額の設備投資を相殺できると考えたことでした。
さらに、海のそばで海水を取水しやすいことと、魚を陸揚げし出荷するための製氷機などのさまざまな設備が整っていることから、地元漁業協同組合が管理する漁港に養殖事業所を置いています。
「組合に加入させてもらうために、まず岬町に移住もしましたよ(笑)」。
作業後は常に洗浄を行い、清潔に保たれている加工センター。 - 品質と量が安定する陸上養殖 おいしい魚を手頃な価格で
-
大阪府下に養殖場があることのメリットはコスト面だけではありません。奈須社長が何よりも強くアピールしたいと考えているのは、朝締めた魚を昼には届けられるという抜群の鮮度の高さです。
「魚を締めてからあえて2~3日寝かせて食べることもある東京と違って、大阪は特に鮮度に厳しいので、大阪に一番近い養殖場を持っていることは大きな武器ですね。飲食店のお客様が陸上養殖に興味を持って見学に来られることがありますが、国産の養殖サーモンがまず珍しいですし、こんなに新鮮なのを食べたことがないと驚かれます。しかも鮮度にシビアなことから、当日に使いきれるだけの発注をされるのでフードロスの削減にも貢献していると思っています」。
自ら海面養殖に携わっていたときに実感した稚魚の安定確保という課題も、卵からふ化した種苗だけを使用することで解決しています。飼育水は殺菌しているほか、厳密な管理下にあるので病気の発生もなく、抗生物質を使うこともありません。現在、養殖している主な魚種は、陸上養殖に向いているというサーモン、トラフグ、クエ、ヒラメ。陸上養殖によって質とともに量も安定するため、価格も安定すると奈須社長は語っています。
「いわゆる高級魚とされる魚ですが、当社としては高額な料金を払わなくてもおいしい魚を食べていただきたいというのが方針であり、その考えから昨年11月には大阪の道頓堀に、アンテナショップとして当社の魚を寿司や天ぷらで食べ放題の飲食店も始めました」。
水槽の中の温度は人為的には管理されておらず、季節ごとの水温に適した魚種を育てている。 - 養殖場や加工所の増設と仲間作りで陸上養殖の拡大へ
-
現在、奈須社長は陸上養殖を広げる仲間づくりも進めています。
「陸上養殖自体は昔からあるものですが、今もまだ一般的ではなく、国内での生産量もわずかです。当社だけで育てられる魚の量には限りがあり、魚の漁獲量が減り続けている今日、もっと仲間を作って魚を増やしたいですね。コンサルタントではないので研修制度などもなく、養殖場もオープンです。志を共にできる方には喜んでサポートします。当社の納入先も増えているので、仲間から魚を仕入れることができるようにもなればいいですね」。
今年は深日(ふけ)にも養殖事業所を開設した奈須社長。今後のプランとしては、今ある堺加工センターに加え、あと5カ所に加工所を点在させ大阪府下全域をカバーしたい考えです。
「さばいたところからすぐに届ける。やはりそこにこだわりたいですね。そして、これからの日本の水産業を引っ張っていくといった気概や向上心、そして夢を持っている若い人材を増やし、将来は上場を目指します!」
養殖場から送られてきた魚は堺加工センター内の水槽で鮮度を維持。
経営のキモ

奈須社長は海面養殖の問題点から陸上養殖に着目。岬町の漁港近くで、品質と量の安定を保ちながら価格を抑えることのできる陸上養殖の拡大に邁進し、2月には大手企業との資本業務提携も行い、陸上養殖場を岬町に整備する予定です。
株式会社陸水
| 代表者名 | 奈須 悠記 |
|---|---|
| 本社 | 堺市堺区新町1-25 |
| TEL | 072-487-8356 |
| 設立 | 2021年設立 |
| 資本金 | 5,500万円 |
| 従業員数 | 15名 |
| 事業内容 | 陸上養殖 |
| ホームページ | https://www.rikusui.com/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=20514 |
角野晒染株式会社
自動車販売から堺の伝統産業へ自社ブランドの確立にも貢献
代表取締役社長 角野 孝二
- 和晒から染め、製品作りまでの一貫生産を強みに自社製品を開発
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堺の伝統産業である和晒加工業で1931年に創業した角野晒染株式会社。100年近い歴史を誇っています。和晒とは、大きな釜の中で織り上がった綿布をそのまま、何日もかけて焚き上げて漂白加工する日本伝統の晒技法で、短時間に圧力をかけて加工する洋晒と異なり、生地にストレスをかけないため柔らかい風合いに仕上がります。また吸水性や通気性にも優れており、昔から浴衣や手ぬぐい、紙おむつがなかった時代にはおしめに使われていました。
同社では約50年前から捺染加工も始め、病院などで使われるガーゼネマキなどの製造・販売も手がけています。堺で基本的に分業制となっている和晒から染め、そして製品作りまでを一貫生産できることも同社の大きな強みです。この強みを活かして最近では、アパレル製品やナイトウエア、ホームウエアなどの自社ブランド製品を開発、製造販売しています。
「ガーゼネマキに代わる今の時代の製品作りをしたいと10年ぐらい前から考えていました。そこで自社ブランド製品をECサイトなどで販売することで持続的な売上を作っていくことにしたのです」(角野孝二社長)。
(左)南村健一郎営業部長 - ものづくりを通して縁がつながり、広がっていくことに魅力を感じて
-
こうした新事業を推進するうえで角野社長の心強い右腕が、南村健一郎営業部長です。入社のきっかけは、2010年の角野社長の代表取締役就任でした。
「事業承継のため帰ってきた27歳の時に、従業員の平均年齢が60歳近くでした。この先、自分と一緒に会社を担ってくれる人をと、10年かけて若い人材を入れました。中学時代の同級生、南村に声を掛けたのは、社長就任の2ヶ月後です」。
当時は自動車販売会社で営業を務めていたという南村部長。週末に休めない仕事のため、家族と一緒に過ごせるよう働き方を変えたかった、と喜んで転職を決めました。
「それに小学生の時に社会見学させてもらった地元・堺の伝統産業に貢献したいという気持ちもありました。もちろん、当社の売上と利益の確保を一番に考えていますが、事業の発展とともに雇用が拡大できれば、ひいては地場産業の活性化につながると考えています。
入社後に実感しているのは、人とのつながりですね。奈良の有名な老舗雑貨店に飛び込みで営業したのが長いお付き合いになったり、失敗した商品の直しを手伝ってくれた新たな外注先との出会いがあったりと、自分たちの思いを持って商品づくりをすることでお得意先をはじめ、外注先、エンドユーザーの方たちとつながっていくことに魅力を感じます」。
細かなデザインや多色のデザインをプリントすることに適しているスクリーンプリント。
同社のオリジナル手ぬぐいの生地に汚れやシワなどがないようつねにチェックしている検反作業。 - 工場の開放や絞り染め体験が産業観光への端緒になれば
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角野社長の厚い信頼を得て、南村部長の業務はさらに広がっています。例えば、「こうばをエンターテインメントに変える」をテーマに大阪府下で開催された「FactorISM(ファクトリズム)」。工場をオープンにすることで堺の和晒や染めについて理解が深まればと参加を決めた角野社長に代わって実務を担いました。
「コロナ禍で世間が低迷していて面白くない時期でしたが、参加企業の社長さんたちがとても前向きで刺激をもらいました」。
和晒・染めという地場産業をもっと知ってもらおうと同社では4年前から、自分で染めた世界で一枚の手ぬぐいなどを製作する「雪花絞り染め体験」も行っています。「和晒・染めが修学旅行生にも来てもらえる産業観光に発展できれば」と南村部長は抱負を語っていました。
工場に隣接して設けられたショールーム(写真左)では、絞り染め手ぬぐいや自社ブランド商品のサンプルが展示・販売されている。
経営のキモ

【次代を見据えて、生え抜きの社員の育成を】
これまで中途採用ばかりでしたが、持続的発展を考えると新卒者を採用したいと考えています。そのためにすでに進めているのがトイレや更衣室などの環境整備で、あわせて誇りの持てる働きがい作りだと考えています。繊維業は独特の用語など覚えることも多いですが、3年頑張ってくれたら、きっと面白さがわかります。
角野晒染株式会社
| 代表者名 | 角野 孝二 |
|---|---|
| 本社 | 堺市西区津久野町3-32-1 |
| TEL | 072-262-0425 |
| 設立 | 1931年創業 1951年設立 |
| 資本金 | |
| 従業員数 | 18名 |
| 事業内容 | 綿織物の精錬漂白加工、捺染加工 |
| ホームページ | https://www.kadono-sarashi.jp/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=21802 |
SAKAIもの新発見
有限会社ノンオリジナル
独自のデザインと一つひとつ丁寧な手作りが人気
やさしく明るい色合いのオーガンジーポーチをはじめ、和柄のミニバッグ、そして帽子など、ノンオリジナルの製品はすべて後藤緩子さんのアイデアから生まれたオリジナルデザインです。
例えば、スマートフォンを携帯するのに便利なポーチは、生地の上に透け感のある生地を重ねていたり、レースもいくつも縫い込まれていたり、またふっくらと仕上げるためにタックが取られていたりと大変手が込んでおり、
創業から40 年近い歴史を重ねても「ハンドメイドが大好き」という緩子さんの思いが伝わってきます。
「お客様から『同じものが二つとないからプレゼントにも最適』とリピート購入いただくことも多いです」と語るのは商品担当の後藤由美さん。緩子さんには企画と製作に専念してほしいとサポート役を務めています。
最近注目されているのは、部屋の中でもウィッグ代わりにかぶることのできる帽子です。入院されている方へのお見舞いに購入する方もいるとか。近く業務用刺繍ミシンも導入予定で、ロゴなどのオリジナルデザインを施した製品作りに着手する予定です。
| 代表者名 | 後藤 緩(のぶ)子 |
|---|---|
| 本社 | 堺市南区和田東321 -8 |
| TEL | 072 - 237 -3596 |
| 設立 | 1985年創業 1991年設立 |
| 資本金 | 300万円 |
| 従業員数 | 1名 |
| 事業内容 | 化粧ポーチやバッ グ、帽子などオリジナル布雑 貨の企画・デザイン・制作 |