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堺IPC PRESS 2023.7 Vol.68
PICKUP!
父の長年の思いを今の時代に叶えたものづくりへの挑戦、そして、ITの業界から挑んだ福祉事業で若き社長が見たものとは?
- 株式会社エミリエ
- 株式会社Aveire
- 社会福祉法人 美木多園
株式会社エミリエ
家業の堺刃物の技術を生かして新製品づくりに挑戦
代表取締役 河井 健男
医療分野で長年の実績を積み重ねてきた株式会社エミリエ。家業の刃物づくりを「医療刃物」という形で継承したほか、「誰もが簡単に包丁を研ぐことができるようにならないか」と語っていた父の念願を叶えるべく、新たな製品づくりに挑戦しました。
- 医療向け手洗いシステムなど医療機器の開発・製造で成長
-
医療設備機器メーカーに営業職として勤めていた河井健男社長が、医療現場から聞こえてくるさまざまなニーズに応えるものづくりをしたいと、2005年に創業したのが株式会社エミリエです(当時はエミリエ医療システム)。ソープディスペンサーやアルコールディスペンサーといった製品に始まり、医療向け手洗いユニットなど、医療や介護、食品の分野で重視される衛生的な水環境の実現を目指して事業を拡大してきました。
なかでも、電力を使わずにマイクロバブルと薬液を混合し供給する「微細気泡混入水の供給装置」は特許を取得した技術で、それを用いた「スパイラルシャワー」や手洗い装置の「ファインフォース」は高い評価を得ています。
「当社は開発型企業なので、お客様からの『こんなものがあれば嬉しい』という声を大切にしてものづくりを行ってきました。それが当社の一番の強みともいえます」と河井社長は語っています。
それは2017年に新しく立ち上げた刃物事業部で開発を進める医療刃物においても同じでした。
顧客の「こんなものが欲しい」に応えてきた自社内の開発部門。 - 高い技術と専門性が必要な医療刃物の開発に挑戦
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そもそも河井社長が医療業界への参入を考えたきっかけが、実家の家業である堺刃物で医療刃物を展開できないかと考えたことでした。その思いを実現すべくスタートしたのが刃物事業部で、メスやクーパーといった医療刃物の開発、製造を行っています。脳を包む軟膜・くも膜を切るハサミなど人命に関わる医療用具を扱うということで、医療機器製造業や医療機器製造販売業といった各種許可証の取得が必要だったことや、今日求められる医療刃物がどのようなものかといった課題を解決するのに5年という年月を要してのスタートでした。
「医療刃物は医師相手の営業となりますから簡単にはいきませんが、当社はすでに医療機器で長年の実績があり、そこで培った人脈や信頼関係によって、今では『刃先をもう少し細くできないか』『この角度を変えられないか』といった個別の注文もいただくことも増えています」と河井社長。立ち上げから5年足らずで、それだけの信頼を獲得できたのは、同社が誇る堺刃物の技術力もあります。
「刃物類は売りっぱなしでなく、研ぎ直しというメンテナンスをしっかり行うことでお客様の安心につなげています。時には、当社の顧客ではない遠い病院から研ぎ直しを依頼されることもありました」。
同社が医療機器修理業の許可も取得しているのはこのためです。同社がオリジナルに開発した「救急救命ハサミ」も、洋服を切る際に身体を傷つけないように丸くした先がネジ式で外せるのは、研ぎ直しをしやすいようにという発想から生まれたものです。
そして、医師たちから持ち込まれる他社の製品のメンテナンスを行うことで、自社の技術力の向上にもつながったと河井社長は語っています。
同社の堺刃物館三宝店では、一般の人も「治具付研磨機」を使った砥ぎ体験ができる。 - 誰もが刃物を研ぎ直せる「治具付研磨機」を新たに開発
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この同社が重視するメンテナンスという観点から、新たな挑戦として誕生したのは「治具付研磨機」です。
「父が20年以上前から『電動鉛筆削り器のように誰でも簡単に包丁が研げないか』と言っていました。包丁を購入されたお客様からも『研ぎ方がわからない』という声が多くあります。難しいのは10円玉2枚分を挟んだぐらいと言われる角度で砥石に刃を当てることですが、この研磨機ではその角度に砥石が固定されているため、刃を当てるだけで、失敗することなく研ぐことができます。誰でも簡単に研ぎ直しできれば、堺刃物の需要もますます高まることでしょう」。
すでに食品メーカーなどで採用もされていますが、河井社長は一般の方にも使ってもらえればと同社の堺刃物館三宝店での活用を始めました。実際に今年4月に行われたオープンファクトリーでは、訪れた人たちから「職人になったみたい」や「切れ味が戻って感動した」という声が多く寄せられたといいます。
「常々、『うちしかできないことをやれ』と言ってきました。これからもお客様の声に耳を傾け、当社しかできないものづくりに挑んでいきたいと思います」。
経営のキモ

【特集 企業のターニングポイント】
医療機器を立ち上げ、手洗い装置やスパイラルシャワーで事業の安定化を図った㈱エミリエ。新たに、家業である堺刃物の伝統を医療分野に生かすべく、刃物事業部を立ち上げ、医療刃物の開発・製造・修理に展開しています。
株式会社エミリエ
| 代表者名 | 河井 健男 |
|---|---|
| 本社 | 堺市堺区宿屋町西2-2-22-210 |
| TEL | 072-204-1100 |
| 設立 | 2005年 |
| 資本金 | 1,000万円 |
| 従業員数 | 18名 |
| 事業内容 | 手術室・病棟用手洗装置などの医療機器や周辺機器、消耗品の開発・製造・販売、堺刃物の製造・販売、医療刃物(鋼製小物)の販売・修理など |
| ホームページ | https://emirie.biz/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=814 |
株式会社 Aveire(アヴィーレ)
IT事業に加えて就労継続支援事業も夢は福祉の待遇改善
代表取締役 畠中 祐太
14歳から独学でホームページの制作を始めたという畠中祐太社長。そのスキルを活かしてWEBやSNSを活用したコンサルティング事業を展開してきましたが、3年前から福祉事業に挑戦。就労継続支援B型事業所を開所しています。
- 型にはまらないWEB制作で実績と信頼を蓄積
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畠中祐太社長が起業したのは19歳。当初はアパレル事業でのスタートだったといいます。
「大学に入学したものの自分の力で勝負してみたいと中退し、最初は中国から仕入れた洋服をECサイトで販売していましたが失敗。個人で登録したクラウドソーシングで、WEB制作の実績が評価され表彰されたことから、本格的にWEB制作で事業を展開することにしました。
当社の強みは、WEBとはこういうものという既成概念に捉われないWEB設計やマーケティングを提案できることです。私自身が独学でWEB制作を習得したため、ルールや型がないんです。最も大事なのはユーザーにとっての見やすさや使いやすさだと考えています」と畠中社長。具体的には、今では主流となっていますが、スクロールをずっと下に引っ張らせるようなページは訪問者の離脱率を上げるからと、ずっと以前から簡潔なページづくりを提案していました。当初は依頼主も懐疑的だったそうですが、実際に問合せ数も売上げも倍増し喜ばれた事例もあるといいます。
就労継続支援B型事業所「Sunny」にて、袋詰の作業を行っている利用者の皆さん。 - 障がいを持つ家族をきっかけに就労継続支援事業所を開所
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今では、動画配信を含めたSNSの活用による販促や採用活動を支援するコンサルティング事業も好評です。
「動画配信によって収益を出そうとしている個人に向けたサポートも行っています。例えば、ネットで爆発的に話題になって一時的に100万回再生されたとしても、動画の内容に関心のない人を集めた100万回では意味はなく、映画やアニメ、スポーツといった自分の強みとする分野で安定して1万回再生される動画の方が、広告主がつきます。カリスマ的人気ユーチューバーにならずとも収益を上げられるノウハウを提供しているんです」。
このようにずっとITの世界に身を置いてきた畠中社長が、3年前に就労継続支援B型事業所「Sunny」を立ち上げたのは、障がいを持つ家族がきっかけでした。
「支援学校を卒業したあとの進路を考えても就職はなかなか難しい。その時に就労するための訓練場所として、就労継続支援事業A型・B型というものがあることを知りました。そこで、堺ではあまりないパソコンが使える作業所を作ろうと思い立ったのです。パソコンスキルを習得すれば、電車に乗ることや人混みが苦手な人もフリーランサーとして自宅で就労することができると考えたのですが、実際はみんなが作業所に集まって内職仕事をする方が楽しいようです(笑)。『Sunny』の雰囲気はいつも明るいですよ」。
WEB制作からコンサルティング事業まで行う同社社内風景。 - 人を率いる経営者として成長し余力で新たな「挑戦」の準備を
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全く異なる分野への参入で戸惑うことはなかったのか尋ねると、畠中社長は「行政と関わることが多く、慣れなくて大変です。あと、利用者の方たちとどう接したらいいのかということも最初は戸惑いました。しかし、『人と人』として接することが大切と気付いてからは、良い関係になったと思います」と答えています。
畠中社長が同事業所を始めるにあたって決めていたのは、福祉事業だからこれはできないとか、利用者がやりたいことを最初から無理と決めつけないということでした。昨年11月に開催したハンドメイドショップも、同所の特別プログラムとして制作したハンドメイド作品を販売したいという利用者の声から始まったものです。
「ハンドメイド商品が思った以上に売れたほか、手作りパンは売り場に並べたとたんに完売で、利用者のみんなが店頭に堂々と立っていたのが印象的でした。人間の可能性って無限大だと思いましたね」。
「Sunny」ではハンドメイド以外にも、エクセルやワードの検定試験合格を目指す特別プログラムがあり、今年は1名の合格者を出しています。
福祉事業を通して、自分自身の人間的な成長を実感すると畠中社長。ハンドメイドショップは他の作業所とも連携して地域の一大イベントに発展できないかと構想しています。そして、「3K」と言われる福祉業界の待遇改善をまず自社から実践しながら、いつか収益性の高い業界へと仕組みを変えられたらと語っていました。
経営者としての成長を目指し「任せる勇気」を持ちたいと畠中社長。そこで生まれた余力で、次の「挑戦」に備えたいと語っています。
経営のキモ

【特集 企業のターニングポイント】
パソコンスキルを学べる作業所を開所したきっかけは、障がいを持つ家族の就労支援を行うため、自身の強みであるWEBノウハウを生かす方法を考えた末の事でした。今後も枠にとらわれない新しい発想で事業に取り組みます。
株式会社 Aveire(アヴィーレ)
| 代表者名 | 畠中 祐太 |
|---|---|
| 本社 | 堺市堺区東雲西町3-1-30-203 |
| TEL | 072-343-1164 |
| 設立 | 2012年創業 2019年設立 |
| 資本金 | 500万円 |
| 従業員数 | 9名 |
| 事業内容 | ホームページ制作やWEBシステム開発、販促事業、就労継続支援B型事業所の運営、清掃事業 |
| ホームページ | https://aveire.co.jp/ |
| さかしる掲載ページ | https://sakacil.com/detail/?id=4282 |
社会福祉法人 美木多園
前例や常識にとらわれない独創的な発想で新事業の立ち上げも
理事長西尾 正敏
- 暮らし慣れた街に住み続けるための生活支援住宅を提供
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地域に根ざした事業でこの街に貢献したいという思いから、1983年に設立された美木多園。現在は特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホームの運営を行っています。なかでも全国的に珍しく、独創的な事業が「高齢者生活支援住宅」です。
府営住宅の空室を借り上げ、高齢者が暮らしやすいように改装した住宅を提供するもので、長期の居住だけでなく一泊二日からの短期の利用も可能です。発案者である西尾正敏理事長に、その意図を伺いました。
「ハードとしての高齢者施設を次々作り続けることには無理がありますし、安全のためにある程度自由を束縛せざるを得ない施設暮らしが、全ての高齢者にとって良いことだと考えていません。介護は必要ないけれど、生活に少し不安のある高齢者を対象に、暮らし慣れたこの街に住み続けてもらうための住居を提供しています。改装にあたっては、福祉の視点から建築を研究している大阪府立大学(現在の大阪公立大学)の先生たちと共同で考えました」。
- 社会実験的な前例のない事業に国や自治体からの見学も
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前例がなく、社会実験的な側面もあったため、改装のための補助金を申請した国土交通省にも最初は理解されなかったとか。ところが、2011年に本事業が始動すると、国土交通省をはじめ、大阪府などの自治体から多くの見学があったといいます。老朽化した府営住宅の活用事例としても興味を持たれたようです。
各室にトイレはあるものの浴室がついていないのは、高齢者に入浴中の事故が多いことと、広々した浴室の方が気持ち良いからという理由。府営住宅の1室を、談話スペースも備えた大きな浴室に改装しています。そこに事務所を置くことで、職員が利用者と顔を合わせる機会を作るなど、自然な形での生活支援を実現しました。美木多園として自治会にも加入。当事業と利用者が地域に快く迎えられるような配慮も行われています。
ボランティアによる書道や押し花、絵手紙など多彩な教室活動。
地域にあるこども園の園児が訪問し合唱を披露。 - 航空分野で開発されたマネジメント手法で独自の研修
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一方、施設運営においては、中間管理職の激務が課題となっていました。それを解消しようと、西尾理事長自らが昨年度から中間管理職研修を実施しています。これまでも独特な発想で事業を運営してきた西尾理事長が着目したのは、航空分野で開発された「クルー・リソース・マネジメント※」です。
「よくPDCAサイクルで回せと言われますが、それでは悠長なんです。現場で今起こったことに一人ひとりがどう対応できるか。航空機では操縦士と副操縦士は対等の責任を負っているそうです。介護の現場も上司だけでなく職員がそれぞれに自分の役割と責任を果たすべきで、そのためには管理職は管理に徹して、現場のことは職員に任せるよう言っています」。
特別養護老人ホームの林秀学副施設長は「この研修で学んだことを現場の職員たちとも共有し地固めしているところです。全ての職員が同じ方向を見て、一人ひとりの能力を発揮し役割を果たしてこそ、良い介護ができるのだということの理解が進んでいるように思います」。
業務改善会議で職員たちからさまざまなアイデアが発せられることも増えたと西尾理事長。独創的なマネジメントが効果を発揮し始めています。
※クルー・リソース・マネジメント…航空機の安全で効率的な運航のために、利用できる人的資源を効果的に活用しようという概念。
利用者の家族の相談事にも親身になって答える同園の生活相談員。
季節の生け花や絵画が鑑賞できる、まるでホテルのような特別養護老人ホームのロビー。
経営のキモ

【業務の細分化で多様な人材の受入れを実現】
外国人や介護に直接携わらないスタッフなど多様な人材を受入れ、週2日4時間勤務といった多様な働き方を実践しています。具体的には、すき間時間で働きたい方を生活サポーターとして活用し、介護職が専門業務に集中できるようになりました。また、このシステムのために業務を細分化したことで現場全体の効率化が図られています。
SAKAIもの新発見
Fullcolor株式会社
透明なエポキシレジンに思い出の品を埋め込む特注品を
透明感のあるエポキシレジンと木材のコンビネーションが魅力的な包丁立てと線香入れ。 Fullcolor 株式会社が堺らしいものをとサンプル的に制作し、 今年2月の「第 95回東京インタ ーナショナル ・ ギフト ・ ショー」へ出品したものです。会場では人気を果め、何社かと商談があったほか、 堺まで訪ねて来たバイヤ ーもいたといいます。今後ギフト市場を積極的に開拓したいと語る内園茂雄社長。 この反響に大きな手応えを感じたようです。
ー級建築物塗装技能士と塗料調色技能士の資格を持つ 内園社長が塗装業のほかに、 エポキシレジンを使った家具や雑貨の制作をスタ ートさせたのは3年前。海をモチーフにした作品が多く、 エポキシレジンの中に貝殻やサンゴといった自然のものを埋め込んだものを天板にしたテーブルなども制作しています。 最近では、 母の好きな花を埋め込んでほしいという特別注文を受けたのをきっかけに、 花をモチーフにした作品も手掛け始めました。「エポキシ レジン自体は珍しい材料ではないので、 人がやっていないような製品づくりを目指したい」と、 工業系大学との連携を視野に新たな作品作りを構想しています。
| 代表者名 | 内園 茂雄 |
|---|---|
| 本社 | 堺市中区大野芝町75 -1 |
| TEL | 072-343-0649 |
| 設立 | 2018年 |
| 資本金 | 500万円 |
| 従業員数 | 1名 |
| 事業内容 | 各種塗装工事、リノベーション、ウォールアート、家具・雑貨の制作・販売 |