環境ビジネス情報発信 コラム

環境ビジネス情報発信 コラム Vol.14

さかいIPC環境ビジネス研究会
環境ジャーナリスト 富永 秀一
富永 秀一氏

Vol.14「"モノそだて"の時代へ」

「モノづくり」だけで良いのか

日本は「モノづくり」が得意な国である、これは間違いないでしょう。自前の資源もエネルギーも少ない日本が発展してきたのは、低価格の原料を元に、「モノづくり」によって高い付加価値を付けて国内、海外に販売してきたからです。

勤勉で丁寧な日本人が作る製品は、高品質で壊れにくいと、世界的に高い評価を受けてきました。きっと、皆さんが日々生産しておられる製品もそうでしょう。

しかし、日本はしっかりした「モノづくり」をしていれば、それで良いのでしょうか?「モノづくり」へのこだわり、誇りが強い事が災いして、ともすれば、作る事だけに集中し、それ以外に目が向いていない企業が多いのではないかと思うのです。

様々な要因があるにしろ、これほど長期に渡って、日本の経済が停滞している以上、これまでとは違う手を打っていかなければ、現状を打開するのは難しいのではないでしょうか。

私は、その方策の一つとして、これまでの「モノづくり」へのこだわりに加え、「モノそだて」の発想も加えてはどうかと考えています。

総合的に面倒を見る

「モノそだて」には2つの側面があると思います。

一つは、モノを作るだけでなく、総合的に面倒を見るという事です。

例えば、以前、 国際環境技術移転センターを取材した時、日本は高い環境技術を持っているはずなのに、環境事業における国際シェアはなかなか伸びていないと聞きました。

欧米企業は相手の予算に見合った品質のプラントや装置を提案できるのに対し、日本企業は、日本市場で標準となっている仕様をそのまま持ち込むことが多く、結果として、相手のニーズに対して、オーバークオリティで高価な提案になってしまう事、そしてもう一つは、欧米企業は、事業運営まで含めた提案が可能なのに対して、日本企業は依然としてプラントや装置を輸出する域を出ず、せいぜい、売った後のメンテナンス程度しか考えていない事が多いから、という事でした。

欧米企業は、事業運営で利益をあげるという考え方なのに対し、日本企業はプラントや装置の輸出で利益をあげようという考え方だというのです。まさに、「モノづくり」にはこだわるものの、モノを活かした管理、運営、展開といった「モノそだて」に至っていない事が、事業の発展を妨げていると言えるのではないでしょうか。

分野は違いますが、単なる「モノづくり」ではなく、総合的に面倒を見て「モノそだて」をしている良い例が日本にあります。

先日、私が関わっているテレビ番組で、メニコンの田中英成社長を取材させていただきました。メニコンは長年、高品質なコンタクトレンズの「モノづくり」にこだわってきました。しかし、2000年頃、低価格競争が激しくなり、メーカーも販売店も利益が上がらず、ユーザーも、使用期限を過ぎても使い続けるという、誰にもメリットがないような状態になってしまいました。

そこで田中社長が苦労の末、立ち上げたのが「メルスプラン」という、会員制のコンタクトレンズサポートシステムでした。それまで、メーカーは作ったら販売店に渡すだけ、まさに「モノづくり」だけをしていたわけですが、これは、メーカーが直接、会員ユーザーを集め、毎月一定の料金でコンタクトレンズを供給し続けるという、「モノづくり」に加え、総合的に面倒を見る「モノそだて」の新しい仕組みでした。

このプランの成功によって、メニコンは、価格ばかりの競争から脱却し、業績を回復したのです。

これまでにないモノを生み出す

「モノそだて」のもう一つの面は、これまでにない、あるいは大幅に高度化した製品やサービスを生み出し、それだけでなく、高い価値を付けて育てていく事です。

アップル社のi-Padなどは良い例だと思います。それまでもタブレット型の携帯コンピューターはありました。日本企業の幾つかも、見た目はよく似たモノを作っていました。しかし、まさに「モノづくり」をしただけで終わり、大きく発展しませんでした。

アップルは、ストレスなく動き、長時間動作する、モノとしての高い完成度に加え、お洒落で、直感的に操作できるユーザーインターフェース、魅力的なソフトウェア、手頃な価格などをセットする事で、ユーザーにワクワクするような体験を提供し、大きな支持を得たのです。

もしもアップルが、「モノづくり」だけにこだわっていたなら、i-Padがここまで注目を集め、成功することはなかったであろうと思います。

このタイプの「モノそだて」の成功例も日本にあります。ソニーの「ウォークマン」はそうですし、トヨタの「プリウス」もそう言えるでしょう。

それまでにもテープレコーダーはありましたが、ソニーは、それを手のひらサイズまで大幅に小型、軽量化しただけでなく、歩きながら、通勤、通学しながら好きな音楽を楽しむという提案を、「ウォークマン」というユニークで、メリットを良くあらわした名称とともに提示し、世界的な支持を受けました。

エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッドシステム自体はかなり前からありました。しかし、ハイブリッド車は、燃料電池車までの繋ぎに過ぎず、あまり力を入れる必要はないと判断するメーカーがほとんどだった中、トヨタは効率を大幅に高め、低コスト化し、初の量産型ハイブリッドシステムを搭載した「プリウス」を世に出し、大ヒットしました。モーター、エンジン、バッテリーの動作が細かく変化する様子をリアルタイムで表示するディスプレーも斬新で、ドライバーに新次元の運転感覚を提供しました。その後もトヨタはハイブリッドシステムを進化させると共に、様々な車種に搭載し、育てています。

あなたの会社で育てられるモノは?

こうして見てくると、日本にも、「モノそだて」をしてきたと言える企業はありますが、「モノづくり」だけにとどまっている企業の方がまだまだ多いと思います。

御社はいかがですか?育てられるモノが、ありませんか?

管理や運営、展開、メンテナンス、更新など、総合的にまとめて提案できる製品、サービスはありませんか?もしあればメニューを考えてみましょう。

これまでにない体験を提供できるような製品、サービスは生み出せませんか?今あるものを大幅に進化させられませんか?

新年に当たって、御社も「モノづくり」だけの企業から、「モノそだて」もできる企業へとステップアップを考えてみませんか?

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