環境ビジネス情報発信 コラム

環境ビジネス情報発信 コラム Vol.13

さかいIPC環境ビジネス研究会
環境ジャーナリスト 富永 秀一
富永 秀一氏

Vol.13「高まる気候変動リスクにどう備えるか」

見通しが厳しいCOP17

気候変動枠組み条約の第17回締約国会議(COP17)が、南アフリカのダーバンではじまりました。しかし、今のところ良いニュースはなかなか聞こえてきません。

現在の京都議定書では、今や世界最大の二酸化炭素排出国となった中国を始めとする、新興国、開発途上国には削減義務がありません。また、アメリカは、署名はしたものの、批准していません。

すでに不十分、不完全な枠組みとなっているのですが、この目標期限が切れる2013年以降どうしていくのか、今回の会議でも話し合われています。

本来、すべての国が温室効果ガスの排出量削減または抑制の目標と義務を持つ枠組みに拡大していかなければなりませんが、これからの発展を縛られたくない新興国、途上国側は、先進国だけが義務を負うべきだと主張しています。

日本は、今の不完全、不平等な京都議定書の枠組みの単純延長には絶対反対の立場で、すべての国が義務を負う枠組みが無理であれば、せめて、各国が自主的な目標を定めてチェックしあうという妥協案を出しています。

私も、各国が自国に都合の良い目標だけ定めないよう、総排出量と、1人当たりの排出量の両方で目標を定めるなど、各国の努力を比較しやすくするルールを明確にする必要はあると思いますが、取りあえずは義務を負わない枠組みであっても、何も決まらず、空白になるよりはましだろうと思っています。

上昇を続けるCO2濃度

各国政府がこうして牽制しあっている間にも、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出量は増え続けています。

世界気象機関(WMO)によると、2010年のCO2の世界平均濃度は389.0ppmで、前年より2.3ppm増えました。

また、メタンも1808ppbと、前年より、5ppb増えています。

さらに、アメリカのCO2情報分析センターが発表した速報値によると、2010年には、世界で、335億トンもの人為的なCO2が排出されたとの事です。これは前年度より19億トンも多く、過去最高の増加量だと言うことです。

この数字を、コラムの1回目でもご紹介したグラフに当てはめてみると、2010年時点で33.5Gtというのは、すべてのシナリオの想定を上回っています。

このままでは、安定化レベルのCO2濃度が855~1130ppm、世界の平均気温の上昇が4度~8度以上という最悪のシナリオすら超えてしまうかもしれません。

高まる気候変動の足音

地球温暖化が進むと、異常気象が激しさを増します。一つ一つの気象現象を、気候変動に結びつけて説明する事は難しいのですが、大気の対流が盛んになるため、これまでに経験したことのないような異常な気象が発生しやすくなるのです。

例年の1.5倍から2倍という大雨が発端となったタイの洪水をはじめ、日本では、紀伊半島を中心に4日間で1800mmという猛烈な豪雨をもたらし、死者・行方不明者が94人にのぼった台風12号、奄美大島付近まで北上した後で、970hPaからわずか24時間で940hPa、最大瞬間風速70mまで急激に発達した、規格外の台風15号、中国南部では、春以降、今世紀最悪という干ばつに襲われた後、6月以降、今度は一転、大洪水に見舞われるなど、今年も各地で異常気象が相次ぎました。

こうした現象はますます激しくなっていくと考えられます。

過去数千年にわたって、平均気温が±1度という、異常に安定した気候に慣れている人類にとって、短期間に平均気温が数度も上昇するという環境の激変にともなう気象災害は非常にシビアなものとなっていくでしょう。

企業としてどう備えるか

タイの洪水は、現地に進出していた日本企業はもちろん、タイから部品の供給を受けていた企業にも大きな影響を与えました。

日本の場合、気象災害が大きな被害をもたらしても、現象自体は比較的短期間に収まる場合が多いのに対し、延々と平坦な地形が続くデルタ地帯のタイの場合は、数ヶ月に渡って洪水が続いていて、影響が長期間に及んでいます。

企業として、こうした影響を避けたり、被害を最低限に抑えるにはどうすれば良いでしょうか。

私は、前回のコラムでも触れた、「多様性」の確保が、答えの一つではないかと思います。

例えば、会社の主要な機能や工場を、異なる環境の別の場所に設ける。

或いは、同じ部品を別の場所の別の会社から仕入れる。

廃棄物の排出先も、同じ物について、複数のルートを確保しておく。こういった対策です。

こうしておけば、気象災害だけでなく、東日本大震災のような大規模災害や、計画停電などエネルギーの問題、そして外国にも拠点を設ければ、円高など為替レートの影響も抑える事ができます。

平常時は、コストや効率を最優先に考えがちですが、少しコストがかかったり、効率が悪くても、日頃から「多様性」を確保しておくことが、災害、アクシデントに強い、持続可能な企業作りに繋がると思います。

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