環境ビジネス情報発信 コラム

環境ビジネス情報発信 コラム Vol.6

さかいIPC環境ビジネス研究会
環境ジャーナリスト 富永 秀一
富永 秀一氏

Vol.6「エネルギー危機をどう乗り越えるか」

突然やってきたエネルギー危機

3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震と、その津波で被災された皆様にお見舞いを申し上げます。死者行方不明者が3万人近くにのぼるという未曾有の災害に、自然の力に対する、人間の無力を感じるとともに、福島第一原子力発電所の事故という、人間による災害が、さらに被災地の皆さんを苦しめている現実に胸が痛みます。

自然災害からは、時間はかかるでしょうが、少しずつ復興していくしかありません。原発事故の方は、とにかくこれ以上の被害拡大を、全力で抑えていただきたいと思います。

その上で、私たちは、今後のエネルギーをどう確保していくのか、あらためて真剣に考えなくてはいけなくなりました。

多数の火力発電所が破壊され、原発は停止。福島第一原発の大規模事故で、原発に対する信頼は失墜し、原発の新設はもちろん、増設や、停止中の炉の再稼働に対しても反対の声が上がる事でしょうし、今後の事故の進展によっては、稼働中の炉の停止を求める声も、大きくなっていくかもしれません。

一方、石油も価格が高騰しています。簡単に掘れる油田が減って、生産量が伸びない中、新興国を中心に需要が急増し、供給不足となる「ピークオイル」が近いとされ、昨年末には1バーレル90ドルまで上昇。さらに中東地域の政情不安で、価格上昇が加速、1バーレル105ドル前後となっています。これからも原油価格の上昇傾向は続くと考えられます。

原発も駄目、石油も駄目となると、もう昔の生活に戻るしかないという声も聞かれますが、他に方法がないならまだしも、日本は今まで十分な取り組みをしてこなかった分野が多々あります。

今こそ、抜本的な対策をして、持続可能な国に切り替えていく時なのではないでしょうか。そこで今回は、省エネのお話しの続きの予定でしたが、変更して、ちょっと長いですが、いくつか提言をさせて頂きます。

日本をグリーン大国にしよう

提言の基本コンセプトは、「日本をグリーンエネルギー大国に」です。

当面は、エネルギー不足を何とかするという、緊急避難的な対策が必要ですが、それと同時に、長期的な視野に立ち、エネルギーに困らない社会に変えていくため、再生可能エネルギー=グリーンエネルギー中心の社会に変えていく取り組みも進めていこうと言うことです。

最初はコストがかかりますが、普及していけば効率が上がっていきますし、海外から高い燃料を購入する量が減っていきますから、社会全体でかかるコストは減っていきます。

そして、グリーンエネルギーの生産を新産業として立ち上げることができれば、機器やエネルギー自体を輸出することも可能になっていき、再び活力あふれる日本にできる事でしょう。

余剰電力の買い取りを義務づけ、買い取り価格を引き上げる

まずは、電力不足への即効性のある対策として、自家発電施設を持っている企業などから、余剰電力を、1kWhあたり20円といった価格で電力会社が買い取るよう法律で義務づけてはどうかと思います。

今は非常事態ですので、JR東日本等からも供給を受けているようですが、通常、電力会社は余剰電力の買い取りはしないか、しても非常に安い価格に抑えます。

ですから普通、企業は必要以上の発電はしませんし、休日には止めてしまいますが、電気が確実に、それなりの値段で買い取ってもらえるのであれば、フル稼働させるでしょう。

この措置は、電力不足が深刻な東京電力、東北電力管内に限っても良いかもしれません。

グリーンエネルギーの買い取り価格を大幅に引き上げる

グリーンエネルギーの場合はさらに優遇します。

今のところ、2012年からとされている、再生可能エネルギーの全量買取り制度を、前倒しで導入します。しかも、買い取り価格を東京電力、東北電力管内は1kWhあたり60円、その他の地域は1kWhあたり50円といった魅力的な価格にして、原則として5年間は固定するのです。

買い取り金額をいくらにするかは、このエネルギー不足解消にどこまで腹を決めて取り組むかにかかっています。

今回の福島第一原発の事故では、一体何兆円の損害が出るかわかりませんし、何千万人という人達が、放射能汚染の影響を実際に受けたり、精神的苦痛という、金額に換算できない損害を長期間にわたって受けています。原発がいかに高くつくものなのか、まざまざと見せつけられています。

こんな目に二度と遭わないために、社会がどこまで費用をかけるかという問題です。

この費用を電気代に上乗せするのか、環境税(炭素税)で賄うのか、国債を発行するのか、それらを組み合わせるのかは議論をして決めればいいですし、費用が増えた段階で財源を追加していってもと思います。

もし電気代が上がることになっても、噂されているような、節電を促すための単純な値上げよりはずっと良いでしょう。単なる値上げは、何ら新たな展望もイノベーションももたらしません。

以下に、特に期待できるグリーンエネルギーを挙げてみます。グリーンエネルギーによる自家発電を検討されていたり、事業の多角化を検討されている方は特に、参考にしていただきたいと思います。

(1)木質バイオマス

日本は、自国の多くの森林を放置しながら、木材輸入量が世界一というアンバランスな状態です。これまでも木質バイオマス発電は小規模に行われていましたが、採算を取るのが大変でした。

高い価格で電気を買い取ってもらえるようになれば、1万kWを超えるクラスの木質バイオマス発電所が次々にできるでしょう。

ただし、ハゲ山ばかりになっては困りますから、グリーンエネルギーと見なすのは、間伐材や端材等を使った場合で、皆伐した木材を使う場合は、一定期間内に植林する事を条件にした方が良いでしょう。

グラフ1 人工林の蓄積量

資料:林野庁業務資料

ざっと計算してみましたが、少なくとも400万kw程度の発電を賄う量の人工林の木、1億立方mを毎年切っても問題なさそうですし、非常事態という事を考えると、一時的にもっと切っても良いと思います。これで一気に林業も再生され、各地の荒れた森林も整備され、花粉症も軽くなるでしょう。

(2)地熱発電

日本には、電力需要の3割程度は賄えると見られる地熱資源がありますが、これまでほとんど放置された状態でした。

大きな環境破壊を引き起こした原子力発電と引き替えである事を鑑み、自然公園法を見直して、公園内でもグリーンエネルギー施設の設置に関しては、一定の環境配慮を行うことを条件に大幅に緩和します。

また、地熱発電によって近隣の温泉業者が影響を受けた場合に備え、国が基金を作るか、損害保険を掛けて、地元の理解を求めます。

さらに、熱水や蒸気がなくても、高温の岩が地下に存在すれば可能である、高温岩体発電も進めます。

(3)水力発電

ダムを新設する事は大変ですし、一定の環境破壊も招きます。そこで、既設の別目的のダムや調整池を水力発電兼用にしたり、すでにある施設を増強したりします。

また、極力揚水機能をつけ、夜間の電力を(位置エネルギーとして)貯められるようにします。さらに、中小河川や用水路等を利用した小水力発電も、規制を大幅に緩和し、導入しやすくします。

(4)太陽熱発電

太陽熱を鏡で集めて、1000度以上の熱を作り、溶融塩に溜めて、その熱で蒸気を作り、24時間安定して発電する技術があります。

断熱タンクに熱が溜まっている限り、曇っても夜になっても発電できます。そのため、世界的には、今後のエネルギーの主役として期待されています。

日本でも取り組んでいる会社があり、すでに東京でも57kWの発電に成功しています。

この技術の潜在能力は大きく、高温の熱ができるということは、プラントを大型化すれば、発電はもちろん、高温の蒸気や暖房熱、さらには、吸着式や吸収式の冷凍機を使って、冷水や冷気を作る事もできるわけです。

その気になれば、エネルギー的に独立した地域を作ることも可能です。

これは日本のエネルギーを支えるだけでなく、熱を利用した海水の淡水化などにも利用でき、世界にも進出していける技術ですから、買い取り価格による誘導だけでなく、開発や導入促進にも、十分な国費をかけて良いと思います。

(5)バイオオイル

藻類が作り出す油を大量生産する研究が進んでいます。

図1 otomi.tv『日本が産油国になる日』より
図1 otomi.tv『日本が産油国になる日』より

昨年、これまで有力とされてきた種類と比べ、油を10倍以上の効率で作り出せる藻類を発見した、筑波大学大学院の渡邉信教授によると、この藻類を効率よく生産すれば、日本の耕作放棄地の約5%を使うだけで、日本の石油需要を賄えるという事です。

もっとも理想的に資金やサポート体制が整った場合、6年~10年で日本の需要を賄うところまでいけるとの事。

今すぐの発電には使えませんが、石油の代替ができるということは、火力発電所をはじめ、ガソリンスタンド、内燃機関の自動車、プラスチックの生産設備等が、ほとんどそのまま使えるということです。

この潜在能力の大きさ、実現後の市場の大きさを考えれば、これも十分な国費、人材を投入し、強力に推進する価値があると思います。

(6)風力発電

写真1 今年3月の洋上風力発電に関する講演
写真1 今年3月の洋上風力発電に関する講演

講演内容がご覧いただけます。
USTREAM

風の条件によるので、安定性、出力調整の容易さでは(1)~(5)よりは劣りますが、コストが比較的安いですし、規模が大きくなれば安定し、ある程度予測もしやすくなります。

また、部品点数1万点と言われますので、純国産化を進めれば、一定の経済効果が期待できます。

洋上風力発電が有望ですが、陸上でも適地はあります。地熱発電と同様、自然公園内での設置用件を緩和する事が必要です。

また、低周波が問題になるケースがあるので、近くに民家がある場合、立ち退きや距離に応じた補償の制度を整備する必要があるでしょう。

(7)太陽光発電

太陽光発電は、昼間しか発電できず、制御もほとんどできないため、余り質の良いグリーンエネルギーではありませんが、これまで産業育成のため優遇してきた経緯もあります。

また、個人が参加しやすいグリーンエネルギーですし、停電時に自立運転にすれば、ある程度の電気を賄えるメリットもありますので、これも推進すれば良いと思います。

この他にも、バイオガス、波力、潮力発電等もあります。

大型火力・原子力発電施設に、総合効率を50%以上にするよう義務づける
図2 資料:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」
図2 資料:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」

右の図をご覧になるとおわかりのように、せっかく投入された発電用燃料が持つエネルギーの6割は、熱として大気や海、川に捨てられています。

それは発電用エンジンやタービンの効率が悪いからです。

すでに廃熱も利用するガスタービンでは60%を達成しているものもありますが、まだ効率が悪い物もあるため、出力10万kW以上の高出力火力・原子力発電設備を対象に、5年以内に、総合効率を50%以上に高めるよう義務づけます。

古い発電設備を更新しても良いですし、熱供給をしても良いでしょう。また、バイナリー発電という技術もあります。

火力発電所や原子力発電所は、高温で水を蒸発させ、その蒸気で発電していますが、水よりも沸点が低い、アンモニアやペンタンといったものを利用し、水蒸気で発電した後の、低い熱でも発電できるのが、バイナリー発電です。

これまで、主に地熱発電の効率を高める方法として検討されていきましたが、廃棄物発電施設でボイラーの蒸気を使って発電している例もあります。

日本では、富士電機ホールディングスが、2000kWのバイナリー発電設備を、地熱発電や太陽熱発電用として発売しています。

海外では、2万kWといったクラスのバイナリー発電施設も稼働しています。

こうした技術を使えば、総合効率50%は達成できるはずです。

現時点で思いついたアイディアをまとめてみました。

これらの方策を実施し、この大災害、大事故をきっかけに、日本がグリーンエネルギー大国へと飛躍して行くことを期待したいと思います。

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