環境ビジネス情報発信 コラム

環境ビジネス情報発信 コラム Vol.2

さかいIPC環境ビジネス研究会
環境ジャーナリスト 富永 秀一
富永 秀一氏

Vol.2「誰のための環境対策か」

「地球を守ろう」?

環境問題に携わっていると、時々、違和感を感じる言葉に出くわします。

例えば、「地球を守ろう」。

なぜ上から目線なのでしょうか。

地球の環境は激変するものであり、生命の誕生以来、5回以上、生命の大絶滅が起きています。

2億5000万年前頃の地層 写真1:生物の大量絶滅が起きた2億5000万年前頃の地層。
黒い部分が、海中の酸欠状態を示している。
出典:雲根誌21ワールド

例えば2億5000万年前には、スーパープルームと呼ばれる現象が起き、猛烈な火山活動によって大気中のCO2濃度が高まったと考えられています。

そして、温暖化が進んで、海底に大量にあるメタンハイドレート(高圧、低温の状態でできるメタンのシャーベット)の3分の1程度が溶けたと言います。

メタンはCO2の20倍以上の温室効果があるため、溶ければさらに暑くなり、より深い所まで溶けるという悪循環が起き、今の気温より赤道付近で7度、極地付近では25度も暑くなったといいます。

さらに、メタンは10年程度で分解していくのですが、その際、酸素と結びつくため、大気中や海洋中が酸欠となり、全生物の90%、海洋生物の95%が絶滅しました。

これらの現象は、化石や地層などに証拠が残っています。

守るべきは何か

その前には、逆に大気中のCO2が減少するなどして寒冷化が進み、全球凍結と言って、赤道付近まで地球全体が氷に覆われ、平均気温がマイナス40度になった時期もあったと考えられています。

このように、地球の環境は劇的に変化するのが普通で、たまたま、ここ1万年間は、奇跡的に気候が安定していたに過ぎません。

生命は、大絶滅の度に、それ以前より進化した種が繁栄してきましたから、環境の激変は、長い目で見れば、生物にとってプラスとも言えます。

では、環境が変化して困るのは誰でしょうか?それは私たち人類です。これだけ増えた人口を支え、文明的な生活を送り続けるためには、豊かな生態系や、大量に食物が作れる安定した気候が欠かせません。

その最大の脅威が、私たちが出しているCO2等による地球温暖化なのです。

ですから、私は、「地球を守ろう」ではなく、「より多くの生物が共に生きていける環境を守ろう」と言っています。

人間がいなくなった方がいい?

同じように違和感を感じるのが、「自然のためには人間がいなくなった方がいい」という考え方です。

確かに、現在、最大の環境破壊を行っているのは人類です。

人間がいなくなれば、豊かな自然が戻ってくるでしょう。

しかし、人類は赤道付近から極地付近まで適応して生きる事ができますし、様々な文明の利器を使えます。

種としての人類は、全面核戦争でもやらない限り、例え大規模な気候変動が起きたとしても、そう簡単には滅びないでしょう。

ただし、上でも書いた、「これだけ増えた人口を支え、文明的な生活を送り続ける」ことができるかとなると、とたんに心もとなくなります。

この面で見れば、すでに幾つかの国では破綻寸前、或いは、実質的な破綻状態になっています。

そして、環境対策を行わず、放置した場合、エネルギーの枯渇や高騰、激しい異常気象、食糧不足、水不足等により、破綻する国が続出するでしょう。

破綻国家ワースト10
順位 国名 指数(最悪が120)
出典:フォーリン・ポリシー誌
1 ソマリア 114.3
2 チャド 113.3
3 ジンバブエ 110.2
4 コンゴ民主共和国 109.9
5 アフガニスタン 109.3
6 イラク 107.3
7 中央アフリカ 106.4
8 ギニア 105
9 パキスタン 102.5
10 ハイチ 101.6
環境対策は人間のため

つまり、環境対策は、極論を言えば、人間のためにするのです。

環境対策を、自然のためにするものだと捉えるから、人間がいない方がよいなどという考えになるのです。

もちろん、美しい自然、かわいい動物、綺麗な花などを見て、「守りたい」「大切にしたい」という気持ちになって、「自然を守るために対策をする」という考え方を否定する訳ではありません。

「自然の方が大切だから、人間が滅んでも良い」という考え方には賛成できないということです。

私は、環境対策は、「将来にわたって、より多くの人が、幸福に、安心して生きていくため」にすることだと思っています。

そのために、CO2を出さない再生可能エネルギーに転換したり、消費する化石燃料を減らすよう省エネをしたり、森林を保全したり、生態系に悪影響がある工法を見直したり、有害物質の排出を抑えたり、廃棄物を減らしたりするわけです。

皆さんも、ご自身のため、お子さんやお孫さん、あなたの大切な人のため、そして、お客様のためにも、環境対策をしたり、環境への影響が少ない製品、サービスを開発、提供していただきたいと思います。

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