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堺IPC PRESS 2024.7 Vol.72

PICKUP!

「変える」ことには大きなエネルギーが必要ですが、リスクを恐れず、果敢に挑戦したことによって次代につながる新たな可能性を広げた企業等をご紹介します。

昭和金属工業株式会社

スクリーンショット 2025 10 22

適正な人事評価で社員の自律を促し成長し続ける企業へ 

代表取締役社長小谷 侑久(たすく)

冷間鍛造を用いた金属の塑性(そせい)加工から切削加工まで一貫生産できることや、金属ナットを専門で製造していることなどを強みに自動車業界などでシェアを拡大している昭和金属工業株式会社。この数年の"大改革"により、業績を大きく伸ばしています。

ナットに特化したニッチな領域でシェアを拡大

原材料や人件費の高騰、為替の影響など、日本国内で製造事業を円滑に進めることが難しくなっているなか、昭和金属工業では冷間鍛造と切削の一貫生産によるコストパフォーマンスの高さや、ナット(雌ネジ)を専門に製造している数少ないメーカーとしての強みを発揮。とりわけEV化が急速に進む自動車業界で、多用される樹脂のインサート成型で使用される金属ナットで、同社の金属ナットの需要が高まっています。同社では、日本製の高品質という価値をしっかりと訴求して利益を確保。業績を順調に伸ばしていますが、その要因は、昨年8月に社長に就任したばかりの小谷侑久社長が敢行した大改革でした。
「大学卒業後に入社した大手アウトドアスポーツメーカーでは、統計学を用いたマネジメント分析や機械要素の基礎などを習得したほか、人間関係の良さと福利厚生の充実が働く原動力になることを体感しました。事業を承継すべく2014年に入社した当社では、その2つが全くできておらず、パワハラのような言動も見られました。人間関係を含めた働きやすい環境づくり。そこから変えていかなければ、成長のためのスタートラインにも立てないと思ったのです」。

製品に亀裂やひび割れなどがないかマイクロスコープで検査。
5Sに始まる大改革を敢行 原価管理も徹底して利益を確保

2016年、小谷社長(当時は一般社員)は、自分の考えに賛同し、現場での発言力を持つ係長クラスの社員らを現場や生産管理部門などから選抜して「社長室」を開設しました。
「『社長室』としたのは、社長直下で改革を遂行する部署であることを印象づけるためで、最初に取り組んだのは、改善改革の基礎である5S活動です。直近1年以内に使用しなかったものは、パレットから金型など全てを廃棄して、まず有効スペースを確保しました。床を塗り替えたりしたほか、ホームセンターの商品棚のように見えやすく取り出しやすい工具専用棚を新設するなど、5Sを維持するための『汚れない仕組み作り』を行いました。大きな改造は第2工場に作った中2階ですね。この地域は、創業後に市街化調整区域になり、工場を新増設できなくなったのですが、冷間鍛造と切削では加工サイクルが異なるため、冷間鍛造設備1台に対し、切削設備を複数台用意する必要があり、そのためのスペースを作ったのです。食堂もきれいにし、照明も全てLEDにしたことで電気代は大幅に削減されました」。
改革は他にも、長期設備投資計画を作成し内部留保と投資限度を超過させないシステムを構築したほか、300以上の製品の製造原価や純利益金額を算出し、限界利益率を割っていたり純利益率がマイナス転嫁していたりする製品は値上げ交渉を実施しています。

計量、梱包作業を経て出荷される製品。
製品に不良品が含まれていないかチェックを行う。
評価の基準を明確に示すことで社員の意欲とスキルの向上へ

かつては上司の采配で決定されていた人事評価なども一新、透明性を高めました。具体的には「成果」「思考」「姿勢」「ビジネススキル」「ヒューマンスキル」「マネジメント」「製造知識試験」「自己評価コメント」の8分類のなかで100を超える評価項目を設定し、その一つひとつの評価基準を定めたコンピテンシーをハンドブックにして従業員に配付しています。各役職・階級の手当や賞与の算出方法も開示。自身の努力により次のステージに挑戦できる試験も行っています。賞与授与式では社内トップ10が発表され、選ばれた社員にはそれを示すバッジが支給されるほか、自動的に昇格の対象となります。
「評価基準を満たさなかった社員には降格もあり、旧幹部たちは反発して退職者も出しましたが、現在、社員の平均年齢は40・31歳と若返ったうえ、離職率も全国平均の約半分です。福利厚生面でもバースデー休暇や結婚記念日休暇などを新設しました。今ではほとんどの社員が自分で考えて行動し、のびのびと仕事をしています」。
実は、小谷社長の真の目的はここにありました。社内の能力ある人材を引き上げ、業務の大半を任せることで、小谷社長を中心とした営業部隊が新規開拓に専念できる体制を整えたのです。結果、月平均の見積件数は6件から60件へ、3年連続で年間平均19件の新製品を受注しています。
「1年先のことも予測できない今、中長期計画を策定しませんが、カーシェアリングの浸透などで先細りが予測される自動車産業に代わる新たなモビリティ産業などに視野を広げていきたい」と語っていました。

経営のキモ

小谷社長は人事評価・組織改革とソフト・ハード設備の整備に着手。その結果、社員のモチベーションアップと利益率向上を達成しました。これからは今まで以上に視野を広げ、時代の変化に応じた新商品開発を進めていく予定です。

昭和金属工業株式会社

代表者名 小谷 侑久(たすく)
本社 堺市西区山田2-190-15
TEL 072-274-3888
設立 1960年創業 1972年設立
資本金 1,000万円
従業員数 76名
事業内容

自転車・自動車用各種冷間圧造部品、切削部品、建築関連ナットなどの製造・販売

ホームページ http://www.showa-metal.co.jp
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=3059

株式会社 髙瀬

スクリーンショット 2025 10 22

得意のIT技術で認知症に特化した介護事業を展開 

代表取締役髙瀬 渉市(じゅんいち)

誰もやりたがらないような高度の制御プログラムを得意とし、有名テーマパークのパビリオン制御プログラムを手がけたこともある髙瀬渉市社長が、思いがけず始めることになった介護事業。得意のIT技術を活かして、独自のサービスを展開しています。

難度の高いプログラム開発を強みとして起業

ファクトリーオートメーション(FA)が進展するなかで、技術者として電気・電子設計・制御プログラムに携わっていた髙瀬涉市社長は、制御機器による生産データ管理の面白さに魅せられ、より深く追求したいと個人事業主として独立。誰でもできる簡単な仕事や一度取り組んだ仕事を避けて、難度が高く引き受け手の少ないシステム制御プログラムばかりに携わるうち、世界に生産拠点を広げる大企業のデータ管理システムや、有名テーマパークのパビリオンの制御プログラムなども手がけるようになりました。
「その後プチリタイアして、数年間世界を旅していたのですが、帰国後、ある社会福祉法人とのご縁から、介護現場のシステム改善をお手伝いしました。そこで介護に携わっている多くの職員たちがパソコン業務に苦手意識を持ち、多くの時間を取られてストレスを感じていることに気づいたのです。その原因は、介護現場を知らない人間が想像でプログラムやシステムを作っていることにあると考え、介護職員の心に寄り添い、本来の業務であるケアに集中できるようなシステムづくりをしたいと株式会社ソフトアップJ※1を設立しました」。※1㈱髙瀬の旧社名

地域密着型通所介護サービス「エントレリハ」で行うスタジオトレーニングの様子。
IT技術を活かした介護事業へ 認知症予防装置を開発

当初は介護保険の請求ソフトの開発や事務処理の自動化など、ITを活用した業務支援を行っていましたが、思いがけず介護事業そのものを立ち上げることに。
「今や介護施設はコンビニエンスストアより多く、経営は大変と言われたので、他社と差別化できるのは得意のIT技術を活かすことだと思いました。ちょうど私の母も軽度の認知症を煩っていたので、すぐに認知症を予防したり改善したりする装置を思い立ち、展示会に出品したところ、商社が扱ってくれることになったのです」。
「脳ぽち」と名付けられたその装置は、手と目の協調性や足し算、瞬間記憶など、前頭葉の機能を評価するとともに向上させるトレーニングソフトと、高齢者にも簡単に操作できるタッチパネル形式のパソコンをパッケージ化したトレーニング装置で、すでに特許も取得しています。
この「脳ぽち」の活用を目指して2014年からスタートした地域密着型通所介護サービス「エントレリハ」では、「脳ぽち」のほか、バランス強化や四肢の筋力アップなどを目的としたスタジオトレーニングなどを行っています。ユニークなのは、地元の農家や商店と連携した買い物支援です。利用者が到着後1時間以内に大画面のタッチパネルで米や野菜、日用品を注文しておくと、帰りの送迎車で商品を自宅まで運んでもらえる仕組みです。
「外出がつらい高齢者がスマホで買い物しようとすれば、詐欺などに遭う危険性があるうえ、そもそもスマホの小さな画面は高齢者には使いづらいのです。腐らせてはもったいないと考える世代ですから、ナス1個からでも買えるようにしました。地元の商店と連携することで地域貢献にもつながればと考えています」。

「エントレリハ」では、認知症予防に認知症予防装置・脳ぽち(写真1)を活用。その他、理学療法士による個別リハビリ(写真2)やレッドコードを使った体幹トレーニング(写真3)などを行っている。
脳神経関係の介護サービスの全国展開を目指す

最近は、同社の脳神経に着目したトレーニング装置の開発や、それを実践する介護施設づくりが認知症の研究者たちに高く評価され、髙瀬社長自身も専門研究会に参加し、得意の分析技術で脳神経関係の介護システムづくりの研究・開発を本格的に進めているところです。
「今後はこのシステムをさらに広げようと自社でも拠点を拡大する考えですが、あわせて認知に特化した介護施設のDX化の加盟も募っています。このように全国的に認知・神経関係の介護サービスを展開したいと考えていることから、かつてのソフト開発会社のイメージから脱却するため、今年1月には社名を変更しました」。
そもそも、ITの対局にあるような介護事業への大転換に不安はなかったのか、の問いには「私の不得手な領域をカバーしてくれるパートナーを迎えましたから」と髙瀬社長。将来の夢は、認知症の方がイキイキと暮らせるテーマパークのような村を作りたいと語っています。「商店など敷地内の全てのサービスは、認知症介護の専門スキルを備えたスタッフによって運営され、利用者の尊厳が確保される村です」。

経営のキモ

同社の大きな強みはIT技術と介護現場のニーズを的確に結びつけた点にあります。現場に寄り添った独自のシステムによって、介護サービスの差別化を図り、競争力を高めています。認知症介護の未来を見据えた事業展開も魅力的です。

株式会社 髙瀬

代表者名 髙瀬 渉市(じゅんいち)
本社 堺市堺区甲斐町東3-1-13
TEL 072-222-2666
設立 2010年設立
資本金 200万円
従業員数 18名
事業内容

コンピュータシステム、機械装置のプログラム、Webシステム、介護ロボット、介護施設などの企画・開発・運営

ホームページ http://www.takase-k.com
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=13535

株式会社グランディーユ

スクリーンショット 2025 10 22

生まれ育った堺で、カフェ事業と障害者就労支援事業のマネジメント

代表取締役小笠原 恭子

社会で生きづらい全ての人がイキイキと働ける場所づくりを

2014年の設立来、株式会社グランディーユは、知的・精神・発達障害を持っている人やニート・ひきこもりの人たちに働く場や居場所を提供すべく飲食事業のほか、多様な人材を雇用してきたノウハウを提供するハンズオン支援事業や地域活動支援事業「ぜるこば」など、幅広く事業を展開してきました。なかでも昨年1月に開所した就労継続支援B型事業所「レゾナンス」は、レゾナンス弁当の製造などを通じて、集団で働くことに必要なコミュニケーションや社会人としての基本的なルールなどを学ぶ場となっています。
同社の本拠地が、堺市産業振興センターにあるカフェ「メゾン・ド・イリゼ」で、ビジネスマネージャーの川村みのりさんは、ここでカフェやケータリングといった飲食事業と、就労継続支援B型事業所「レゾナンス」の両方の運営を担っています。

「メゾン・ド・イリゼ」の店内。
川村みのりビジネスマネージャー
柔軟な考え方と大学で得た知識が新たな展開への力になると期待されて

「入社は昨年4月ですが、大学4回生だった令和4年の秋からインターンとして運営をお手伝いしていました。もともとは長年の憧れだった航空業界への就職を目指していましたが、コロナ禍に採用停止されていたこともあり、改めて自分の中で軸となる仕事は何かを考えました。そして、私が生まれ育った街であり、今も生活の場である最も身近な堺市で、何かを変えることに貢献できたらと思っていたところ、グランディーユのことを知り興味を持ったのです。すぐに小笠原社長に面接を申し入れ、生意気にも『私を入社させないのは御社の損失』と強気のアピールをしたんです(笑)」。
一方、小笠原恭子社長は「誰もがイキイキと輝ける場をこの社会に創りだしていきたいという理念に共感してくれたことと、福祉の枠にはめないで事業を展開してきた当社において、売上を確保しないと雇用を生み出せないことを一緒に考えてくれる人だと思い、採用しました。柔軟な考え方や幅広く物事を捉える力、そして大学で学んだ知識を活かして、今の当社に足りないところを一緒に考え、行動し、構築してくれると期待しています」と語っています。

同社では今後、動物性の素材を使わないヴィーガンスイーツやグルテンフリーのスイーツの製造販売を、就労継続支援B型事業所の仕事として注力していく計画。
「メゾン・ド・イリゼ」では、堺で収穫 された小松菜やほうれん草、白菜、泉 州のタマネギなどを使用して、「地産 地消」に努めている。
福祉事業でもさらに貢献するため国家資格の社会福祉士を目指す

小笠原社長が日頃、「福祉事業とは関係なく、ご飯がおいしい、体に良い、雰囲気が良いという理由で選ばれるカフェでなくてはいけない」と話していることを受けて川村さんは「一般のお客様とレゾナンスメンバーが共存する場だから、その兼ね合いに気を遣っています。例えば、当店では箸袋にレゾナンスメンバーが自由に絵を描いてお出ししていますが、何も知らないお客様に違和感を抱かれないよう、そこに必ず『ありがとうございました』や『またご来店ください』といったメッセージも入れることにしたのです」。
あらかじめ計画していたことも、レゾナンスメンバーのその日の体調などによって思うように進められないこともありますが、「前にできなかったことができるようになったり、元気よく挨拶をして帰っていくのを見送っていたりすると、とても嬉しくなりますね」と川村さん。声を掛ける時は必ず名前を呼ぶことを大切にしているのだとか。「あなたのことを気にかけていますよ」ということと、「あなたへ話していますよ」ということを伝えるためです。
今後は福祉事業の方でも貢献できるよう、国家資格である社会福祉士の取得を目指したいと語っていました。

経営のキモ

【理念の共有を第一に採用し、対話を重ねて定着を図る】
採用にあたっては、当社の理念に共感できるかとともに、その人の強みがビジョンの実現にどう活かしてもらえそうかをイメージします。定着という点で、障害を持つスタッフとはやりたいこととできることの乖かい離りを少なくするため面談を繰り返し、正社員は一人で抱え込まないようチームで考え、多様な視点を持つことで認識のズレを早く解消するよう努めています。

株式会社グランディーユ

代表者名 小笠原 恭子
本社 堺市北区長曽根町183-5 堺市産業振興センター内
TEL 072-257-7420
設立 2014年設立
資本金 500万円
従業員数 25名
事業内容

カフェ事業、弁当事業、菓子製造、ハンズオン支援、教育支援、障害者・ニートひきこもり支援

ホームページ https://grandeur-jp.com/
さかしる掲載ページ https://sakacil.com/detail/?id=22801

SAKAIもの新発見

ビジュアル

株式会社美華道

アスファルト舗装を 石畳のように美しく加工する 「ストリートプリント」

まるで本物のレンガや石畳が敷かれたような路面。アスファルト舗装の上から加工できる「ストリートプリント」です。路面を新しくし直したような美しい仕上がりですが、アスファルト舗装を加熱したうえに、レンガ調や石畳調のテンプレートを配置して型押しをし、そこに専用の路面強化コーティング剤を吹き付け着色したもの。低コストと短期間でアスファルト舗装を石畳のように加工することができるのが特長です。
路面を加熱したときにヒビや割れ、ガタつきなどの補修を同時に行えるほか、一体的に塗装されるので部分補修の継ぎ目もなく、インターロッキングブロックのように1枚のブロックが浮き上がるといったトラブルもありません。滑りにくく、さらに若干の凹凸感があることから通行車両の速度抑制につながるのもメリットです。もともとカナダで開発された施工法のため、デザインは洋風のものが多く色も54 色でしたが、同社では型枠製作や調色も自社内で行っており、不規則に敷石を並べた日本的な乱張り風など、施工主のさまざまなオーダーに柔軟に応えられることを強みとしています。

画像
代表者名 林 亮子
本社 堺市南区富蔵2705-10
TEL 072-284-5353
設立 2016年設立
資本金 500万円
従業員数 12名
事業内容 ストリートプリント の設計・施工・メンテナンス
代表者写真
さかいモノてらす