オム印刷の社是「笑っていこや」。東京の得意先からは「関西らしくて面白い」と評判らしいですが、この社是の背景には過去のつらい出来事がありました。
「21年前に火災で会社を失ったのです。廃業も覚悟しましたが、４か月後に仮社屋で業務を再開しました。その頃の写真に、社員が談笑している一枚があったんです。『そやな、つらい時につらい顔をしていても仕方がない。いつか笑えるようにしようや』、その思いが４年後に社是になりました。笑いは細胞を活性化すると言いますしね（笑）」と松本恭宣社長は語っています。
その社是と同時に定められた経営理念は、「私達は、信頼され期待される企業として発展していきます」「私達は、夢の持てる職場で人間力を高めます」「私達は、お互いが協力しあって明るく元気な社風を作ります」。
松本社長はこれらの社是や経営理念を実際の経営に反映させようと、毎年、「経営計画書」を作成しており、今年度で18回を数えました。
「経営計画書は、一度はゼロになった会社をどう再建するのか、社員と一緒に頑張っていこうという思いの表れです」（松本社長談）。

同社の組織管理法としてユニークなのは、昨年から導入を始めた３人１グループの「小グループ化」です。
その狙いについて松本社長は「当社では社員一人ひとりに数値目標を設定せず、グループでの達成を求めています。人にはそれぞれ得意、不得意があり、例えば営業で得意先の新規開拓が苦手な社員もいます。代わりに顧客管理が得意なら、そこで貢献すればいいんじゃないかという考えですね。『一人はみんなのために、みんなは一人のために』。経営理念にある『お互いが協力しあって』ということです。人材に限りがある中堅企業だからこその工夫だといえます」と語っています。
３人という少人数グループゆえにフットワークも軽く、気軽に立ち話的にミーティングを開くことができます。人数の多い会議では遠慮して発言しにくい若い社員が、活発に意見を述べることができるのも大きなメリットといえるでしょう。
また、作業時間の段取りなどもリーダーを中心に、メンバーが自主的に判断することを認めているとか。これはトップからの指示がなくても、自分たちで考え、行動できる自立した次世代を育成するためなのだといいます。 「私は時代の流れや企業の成長にあわせて経営理念も変わってよい、いや変わるべきなのではないかと考えています」と語る松本社長。来年末に創業30年を迎える節目に、どのようなビジョンを打ち上げるのか、社内外から大きな期待が寄せられています。

▲マウスパッドに下に隠れるカレンダーシールや暗闇でもスイッチの位置がわかる蓄光シールなどのユニークな自社開発製品がある。