環境ビジネス情報発信 コラム

環境ビジネス情報発信 コラム Vol.35

さかいIPC環境ビジネス研究会
環境ジャーナリスト 富永 秀一
富永 秀一氏

Vol.35「IPCCの警告をどう捉えるか(1)」

記録続きの夏だった

今年の夏は記録続きでした。その兆しは、すでに異常に早い梅雨明けから現れていました。東北と北陸ではかなり遅かったのですが、九州から関東甲信にかけては、平年より6日から15日も早く、7月6日~8日に明けてしまい、長い長い夏が始まりました。

連日のように、真夏日、猛暑日が続き、2013年8月12日には、高知県の四万十市江川崎で41.0度と、日本の最高気温の記録を更新したのをはじめ、この夏に最高気温の記録を更新、または並んだのは、気象庁の観測点927地点の内、143地点にも及びました。

夏(6~8月)の平均気温は西日本で平年より1.2度高く、統計開始以来の最高記録となりました。

フィリピン沖の海水温が高く、強い上昇気流が起きて、気流が降下するところにできる太平洋高気圧の勢力を強め、同時に、インドネシア沖の海水温上昇が、チベット高気圧も強めたことが、猛暑となった主な原因と考えられています。

台風にも異常が

今年は台風の発達の仕方や進路にも異常が見られました。私がまず驚いたのは、9月16日に愛知県に上陸した台風18号でした。気象庁は、最も発達しても985ヘクトパスカルと予想していたのですが、日本に近づいてからも勢力を強め、上陸時には960ヘクトパスカルまで発達しました。

通常、台風は本州に近づくと勢力を落として上陸します。ところが18号は、もうすぐ上陸という段階に来て中心気圧が25ヘクトパスカルも下がったので、驚いたのです。

9月中旬になっても本州付近に熱い空気がとどまっていたこと、そして、海水温が高かったことなどが原因として考えられます。

この秋、私が最も警戒が必要だと思ったのが、台風26号です。何しろ大きく、南海上では、台風の外側を円形に取り巻く雲は、日本列島をすっぽり、それも、北方領土から尖閣諸島まで包み込むほどの大きさがありました。

本州に近づくにつれ、中心気圧は上がっていきましたが、暴風圏は半径300キロメートル程度と巨大で、最大瞬間風速は50メートルもありました。

最終的には上陸しなかったため、最も威力がある、台風の中心から右側が海上を通過しましたが、それでも、台風がもたらした暖気と北からの寒気がぶつかって、伊豆大島に、24時間で824ミリメートルという大島での観測史上最大の大雨をもたらし、死者・行方不明者42人(10月30日現在)という被害が出ました。

もしも、首都圏に上陸していたら、暴風圏が巨大なために簡単には衰えず、猛烈な暴風雨によって、もっと悲惨な状況になっていただろうと思います。

その後も、10月も下旬だというのに27号、28号と強い勢力の台風が日本付近を通過し、今年の夏・秋の気象の異常さを際立たせました。

これらの現象が起きた理由を探っていくと、やはり海水温の上昇が主な原因の一つとして考えられますし、その背景として、地球温暖化をはずす訳にはいきません。

IPCCの報告書は何を伝えているのか

その地球温暖化、そしてそれによる気候変動について、世界の科学者達が集まって観測、予測する機関、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、今年9月、第1作業部会の報告書を出しました。

IPCCは、2007年に第4次評価報告書を出したあと、2014年に予定されている第5次評価報告書の発行に向けて、第1から第3までの作業部会が活動中で、その先陣を切って、地球温暖化・気候変動に関する自然科学的根拠をまとめる第1作業部会が報告書を承認したのです。

その内容については日本でも報道されていますが、多くの場合かなり簡略化されていますし、かといって原本は分厚く(2216ページ)日本語版がありません。また、日本の気象庁が訳した政策決定者向けの要約を読んでも、予備知識がないと、なかなかそれが何を意味しているのか分かりにくいでしょう。

そこで、政策決定者向け要約の気象庁暫定訳をもとに、いくつかのポイントを紹介しながら、中小企業の皆さんにとってどんな意味があるのか、どう捉えればいいのか考えてみたいと思います。

○温暖化は疑う余地がない

「気候システムの温暖化には疑う余地がなく、1950年代以降、観測された変化の多くは数十年~数千年間で前例のないものである。大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇し、温室効果ガス濃度は上昇している」『IPCC 第5次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約 気象庁暫定訳(2013年10月17日版)』P.3より(以下ページ数のみ)

地球温暖化が起きていることは間違いないと断言しています。大気も海も、観測データによって、温度が上昇していることが確認されているし、全体として見ると雪や氷が溶けて減っています。氷が溶けて海に流れ込んだり、高温によって海水が膨張したりして、海面の水位も、観測データによって上昇が確認されています。それらの背景となる、CO2やメタンなどの温室効果ガスの濃度も急激に上昇していることが確認されています。

この段階では、原因はともかく、数十年~数千年で前例がないほどの各種観測データの記録が示しているように、地球が温暖化しているのは間違いないとしています。

○増加した熱の9割は海に貯まった

「海洋の温暖化は気候システムに蓄積されたエネルギーの増加量において卓越しており、1971~2010年の間に蓄積されたエネルギーのうち90%以上を占める。」P.10

地上の気温が上昇している事は皆さんご存じでしょう。1880年から2012年までに、世界の平均気温は0.85度上昇しました。しかし、地球温暖化とは、地表付近の気温の上昇だけを指すのではありません。もっと上空も含みますし、深海までの海の温度上昇も含みます。

実は1971からの40年間に、温暖化によって増加した熱の9割は、海にたまったというのです。実際、この期間に海面から水深75メートルまでの水温が、10年あたり0.11度のペースで上昇したということです。

増加した9割の熱の3分の2以上は海の水深700メートルまでにたまり、残りはそれより深い海にたまった可能性が高いとのことです。

ここで思い出すのが今年の猛暑や台風の異常です。フィリピン沖から日本近海までの海水温が高かったことも、地球温暖化と無関係とは言えないでしょう。

○溶け続ける氷

「過去20年にわたり、グリーンランドおよび南極の氷床の質量は減少しており、氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。また、北極域の海氷および北半球の春季の積雪面積は減少し続けている。」P.11

グリーンランドの氷は、1992年からの10年間は、年間340億トンの割合で減っていて、それが、2002年からの10年間では、年間2150億トンと、大幅にペースアップしたとのことです。

また、南極の氷も、同じ期間に年間300億トンから、年間1470億トンへとやはりペースを速めて溶けているとのことです。これは、陸地の氷が溶けて海に流れ込んでいるということですから、海面上昇に繋がります。

北極の海氷は、海に浮かんだ氷なので、溶けても直接海面上昇にはつながりませんが、積雪面積の減少と同様、光の反射率が高い氷や雪の面積が減って、熱を吸収しやすい陸地や海面がむき出しになるわけですから、地球温暖化を進めることになります。

さらに、北極地方などにある、夏でも溶けず長年にわたって凍り付いてきた永久凍土の温度が上昇していて、厚さや面積のかなりの減少が観測されています。

これは、永久凍土に閉じこめられてきた、強力な温室効果ガスであるメタンやCO2が放出されている事を意味します。

○海面上昇が加速

「19世紀半ば以降の海面水位の上昇率は、それ以前の2千年間の平均的な上昇率より大きかった。1901~2010年の期間に、世界平均海面水位は0.19mm上昇した。」P.13

海面の水位は、1901年~2010年の期間で見ると、1年当たりの上昇は1.7ミリメートルですが、1993年~2010年の期間では、年間3.2ミリメートルとペースアップしています。つまり近年は、3年で1センチメートルも海面が上昇していることになります。

ここまでは、地球にどんな変化が起きているのか、を中心に見てきました。次回は、なぜこのような変化が起きてきたのか、その原因に焦点をあてて見てみましょう。


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